弥彦1
 


数年間いるけど河原も賑やかになった、とおじさんは思います。
最近ここに来た人からは未だに怪しい人扱いをされるけど、今では街の人達から受け入れられている。
緋桐君なんかはかなり昔から友達だけどねえ。
だから隣にいても当然と言うかおじさんからすれば弟レベルみたいな!


「…………」


ま、まあ凄い嫌そうな顔されてる気がするのは置いておいて!
結構前に知り合ったクレハちゃん。
あの子達と仲良くなってから、河原に人が来る頻度が増えた訳だ。
メンバーも一人(と一匹)増えたしね。
それで、今日はいつもの三人で釣りをしてたんだけどなあ…。


「ひ、緋桐君ちょっと手伝ってくれないかな…」

「何を手伝えば良いのか分かりません」

「見ればわかるよね!?やりたくないんでしょ!?」


ヒットした魚が凄く…重たい!
と言うか姿はもう見えている。
海から来たのかと叫びたくなるぐらいデカい魚だ。
三人縦に寝そべっても大きさには足りないし高さは肩車して魚の頭に届くぐらい。
あと何か金ぴかだしこれ…異世界か何かのものなんじゃ。
おじさんよく踏ん張れてるなって褒めて欲しいなあ…!
そもそも、こんなデカい魚今までどこに潜んでたんだろうか。
おじさん気になります!


「おじさん僕手伝う」

「ほ、本当?!じゃあこの釣竿をね…」

「えいっ」

「うわっ!え……ええええ!?」


釣竿を一緒に引っ張って!と言おうとしたら腕に一瞬感じた重み。
そして魚の頭上に刺さった刀。
どうやら釣竿を踏んであそこまで上がったらしい。
けどいきなりトドメを刺しにいくなんておじさん思わなかったかな…!?
結局ビックリして川に落ちたよ!
うん…まあ女の子一人増えた所で釣り上げるのは無理だし、多分正しいんだけど。


「俺が巨大生物は脳天をやれ、みたいな事言いました」

「変な事教え込まないであげて緋桐君!いや変な事でもないけど!」

「倒したよ。でも驚かせてごめんなさい…」

「いや…魚倒してくれたし良いよ。お疲れ様!…へくしゅっ!」


ああ、それにしても凄く…寒い。
そりゃそうだ、水の中に落ちたんだ。とても着替えたい。
でも緋桐君の服は細くて着れない(そもそも着替え貸してくれないだろうなあ)。


「この寒い時期に川になんて落ちるから」

「ほぼ緋桐君の所為でしょ!?」

「椿いつも大きめの服着てるから、おじさん着れるんじゃないかなー…」

「絶対貸さないヨ」

「んんん今その猫喋った!?」

「嗚呼、おじさんはついに幻聴が聞こえるようになりましたと…」

「んもおおおお!!!」


色々持ってこないで!ツッコみきれない!
お、おじさん緋桐君何てもう嫌いよ!
いつも意地悪ばっかりするんだもの!


「何でちょっとオネエっぽいんですかね」

「心読まないでよ!」

「そう言えばあの魚、どうするんですか」

「え…………」


………ど、どうしよう。
完全に脱線して、完全に忘れていたけど。
食べて美味しいなら、パーティみたいなのもありだけどね。
いつもは猫ちゃんが魚釣ったら飛び付いて来るけど。
来ないし金ぴかだし、多分無理だろうなあ。


「にゃあ…(魚のにおいもないし、それ以前に色々疑問多すぎるけどネ」




暫くしても傷み腐る気配すら見せないので、河原の新しいオブジェになった。



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