緋桐1
 


目が覚めた場所は、随分と静かな場所だった。
壁や天井の一部は崩れ、ゴミが散乱。
中には…電化製品と呼ばれる物まで置いてある。
それでも、この建物は間違いなく自分が眠りにつく直前までいた場所だ。
昔は神に祈った人間があんなにもいたのに、今此所で救いを求めているのは投棄された物だけか。


「…この状態を続けるなら消えた方がマシだと俺は思うけど」


ある意味で思い出深い場所だからね。
自然に朽ちていく所を見るのは嫌いではないけど、ゴミが邪魔でちょっと。
まだお世辞で綺麗と呼べる内に、教会だった場所に火をつけた。
随分と勢いよく燃えるなあ、力加減間違えたかな?何て眺める。
……ああ、そうだ。
眺めている場合じゃない、一度屋敷に帰った方が良いかな。
此処で自分が眠りについた理由は、無様にも死にかけ封印されたからだ。
じゃあ、本も酷い事になっているだろう。
取り出してみると、ページ破れや血による滲み、それに表紙が焦げている。
…………やっぱり帰って本を作り直そう。
まあ、アレにバレなければそれで良いか。
普通に会いに行っても面倒な上つまらない、と言うか俺から会いに行く気はないけど。
用事だけ済ませて、ぱぱっと終わらせましょう。


――――――――――――


その後、屋敷に帰ると妹が出掛けていたので、ついでに私物の整理をしていると人間の少女が二人入ってきた。
どうやら迷子みたいだけど…お客さんは歓迎しないとね。
玩具を見つけたのが嬉しくて、身を隠すと慎重に二人に近付いた。



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