アイリス1
 


クレハさんはよく遊びを提案する事がある。
ゲームセンターの様に騒がしい場所は苦手ですが、それ以外の事なら私も着いていく事が多い。
…別に私も行きたい訳ではなく、彼女達を守る使命があるからその為に行くだけです。
それで、今回はピクニックに行く様だ。
元々落ち着きのないクレハさんが、更に落ち着きなく動き回っているのがよく視界に入る。


「ねえねえアイリスちゃん!今度着ていく服どっちが良いかな!」

「行事の内容を考えると動きやすく多少汚れても良い服装が好ましいのでは」

「それはそうなんだけどなんだろ、えっと…女子力?可愛さも欲しいかなって!」

「なら私に意見を求めないでください」


面倒になったので適当に終わらせる。
「アイリスちゃんアイリスちゃんー」何てしつこく呼ばれていますが、それも無視。
暫くすると諦めたのか、クレハさんは遊びに来た光咲さんの元へ行った。
…さて、静かになった所で私のやる事を済ませなくては。
知らぬ間に料理を作って行く係が私になっていたのです。
知ったのは一昨日、ピクニックは明日。
光咲さんの元に居候している子…葵さんですね。
料理が上手な様で、参加するなら彼女に作ってもらおうと考えていたそうです。
まあ、それが断られたと。
二番手の様に扱われたのが何故だか非常に悔しく、昨日は受ける事にしましたが…断っておけば良かったと今は思っています。


「今更断るのは私自身が許せません。日にちもあります。面倒ですが…作りましょう」

「あ、アイリスちゃんー!」

「…なんですか」


あれこれ考えている内にクレハさんが帰ってきました。
作業に遅れが出ては困る。用件だけ聞きましょう。


「あのね、アイリスちゃん料理作らなくても良いって!」

「…は?」

「えっと、葵ちゃん参加しないだけで料理は作ってくれるんだって!それを私が全部断られたと勘違いを…」

「……それで?」

「あの…その…ご、ごめんなさい……」


…後ろにある食材と、私の不機嫌が伝わったのか震えるクレハさんを交互に見る。
ああ、確かに私は面倒だとも言いました。
ですが、この結果に納得をするなんて無理な話。


「…………私も作ります」

「え!?」

「参加人数はいつもの四人と私を含めて五人でしたね。曽良さんもいますし食べきれるでしょう」

「アイリスちゃん本当に…?」

「貴女がここにある大量の食材を全て処理してくれると言うなら、大人しくこの役目から降りますが」

「え!?それは無…た、楽しみだなあ明日の料理沢山だね!残さずに食べないとね!すっごい美味しいんだろうね!」

「…と言う訳で、準備の邪魔です。出ていってください」

「はいいいい…!!」


…そんなに不機嫌な顔をしていましたかね。
逃げる様に彼女は出ていき、閉じられた扉をじっと見る。
まあそんな事をいつまでも考えている暇はないので、明日どんな内容にするか決めましょう。
争っている訳ではないけれど、どこか負けたくないと思ってしまう。
…とにかく今回は気合いを入れて作る。
メニューが決まったら試作して、クレハさんに食べさせれば良い。
そうすれば何とか使いきる事が出来そうですね。


「折角ですし、少し挑戦してみましょうか…」


ついでに、たまには普段作らないような料理を作りましょう。
弁当に適してはいない気もしますが、和食なんかも作ってみたい。
取り敢えずいい加減メニュー決めだと、私は本と睨み合いを始めた。


…しかし、こんな事をしている私も何だかんだ楽しんでいるのかも知れません。
周りには難しい顔をしている様にしか見えないと思うので、そんな気持ちは秘密ですが。

料理本を見つつ明日の事を想像すると、少し笑みがこぼれた。





(アイリスちゃんメニュー決まった?)(えっと…これも作ってみたいしでもあれも…悩みますね)(もう夕方なんだけどもしかしてずっと悩んでたのかな…!?)



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