光咲4
 


テスト期間も終わり、目標点数に届かなかったらしいクレハセンパイがアイリスさんに連れて行かれ、残った三人で食べる昼食。
最近達毅センパイがやたら小鳥遊センパイの事見てるなあと思ってると、突然こんな一言を言い出した。


「小鳥遊って岡崎の事好きなのか?」

「……は?」

「いやだって明らかに俺達と態度違ぐえええ…っ!!」

「あーあー、手が勝手に」


そして、すぐさま首を掴まれて死にかけている。
これがネックハンギングって奴かな?
いや、きっと達毅センパイにしては気を使ったんだと思う。
…普段ならクレハセンパイもいる場面で言う可能性もあったし。
でも相手が悪かったと言うか…何というか。


「今日の夕飯は人肉か。バカが移りそうだけど、食糧難だしな」

「じ…死ぬ…」

「もう許してあげて!」


取り敢えず、真面目に命が危なそうだったので助ける事にした。
学校でそれはまずいから!


――――――――――――


「ま、まさか後輩に殺されそうになるとはな…ふふ…」

「そう言う願いがあるならいつでも手伝ってやるけど」

「ま、まあまあ。実際どうなんすか。気持ちの真意以外にも、こう色々と」


…救出から数分、やっと達毅センパイが生き返ったので本題。
小鳥遊センパイってあまり自分の気持ち言わないけど、どうなんだろう。
いや、まああたしには見えてるからうっすらとは予想出来るけど。
でもそういう力を持つもの同士何かあるなら助けたい所。
きっと、達毅センパイもそう言う考えなんだと思う
…少しの沈黙の後、溜め息と「本人に言ったら食い殺す」の脅しと共にぽつぽつと語り出した。


「モ…いや、岡崎って綺麗だから。心って言うか、家から出た事ない子供みたいな…」

「あー…分かるかも」

「絶対誰かが一緒にいる気がするしな」

「今は能力持ちも多いし、天使や悪魔ってのとも交流があるから、それ自体は疑問じゃなくても…深い部分は知らないと思うんだよ。例えば…桜井とよく一緒にいる女子なんか人間じゃないって聞くし、多分誰か殺した経験か近い何かがあると思うんだ。達毅が最近可愛がってるあの神社のも持ってるだろ。何かあるかも知れない。でも、岡崎は目の前の奴らにそう言う事があるなんて、絶対考えないと思う」

「多分ね。センパイ、人を疑う事もしらないからなあ」

「だから深くに入って、拒絶されたり、アイツが汚れるかもって考えたら好きだとかそう言う気持ちを持っていても何も出来ない。俺達が何かをする可能性だってある。怖いだろ…そう考えたら」

「なーるほどね…」


…何か、小鳥遊センパイって意外と臆病なのかも知れない。
まあ、分かるんだけどね。
あたしもそんな事あったら怖いもん。
こんな能力のせいで色々ある訳だしね…不安にもなる。
でも、達毅センパイは違うみたいで


「なんつーか、意外とビビりだなーお前」

「あ?」

「怒んなって。だって俺達は三人いるんだぞ?いや岡崎もいれて四人だ!四人もいるんだから、誰か一人が何かをやらかしても止められるだろ!俺は出来ると思う!何てったってお前らの事を信用してるからな!」


何て事を言い放ったのだ。
もっの凄いポジティブだなこの人。
そして暑苦しい。少年漫画かよ。
また何か技でも決められそうな気がしたけど、これには流石に唖然とした顔だ。


「……バカ過ぎて頭沸いてんのお前」

「沸いてねえよ!…俺も昔やらかしたよ。友達に酷い火傷させた。流石の俺もきっと許してくれない。駄目だ、親にも見捨てられるだろってな。でも、そいつ許してくれたんだよなあ。…あ、そう言えばそいつ岡崎に何か似てるな!…でだ、俺はお前らよりかなり恵まれた環境にいたんだと思う。でもそう言う事もあるって言うか、少なくとも俺達の事は信じて欲しいんだよ」

「はー…意外」

「いや意外ってなんだよ!」


あの達毅センパイからそんな言葉が聞けるなんて。
でもそっか、今まで酷い扱いしてきたけど、よく考えたら信じてくれてるから許してくれるんだよね。
こう言う人が一人はいると助かるって本当なのかも。
表があって裏がある、みたいな感じ?


「マジでバカのわりに意外…いや、うん。分かったよ。俺も信じる。……ヒカリとモミジの事」

「あれえ!?」

「俺は!?」


一人足りない!
いやある意味センパイらしいけど。
あ、でもこれいつもの雰囲気に戻ってきてる様な…?
……ははーん、成る程!


「お前は無理。飯食い終わったから教室戻る」

「何でだよおおおお!!」

「…達毅センパイ達毅センパイ!多分…普段の態度がセンパイへの信頼なんじゃ?」

「えー!でもあいついつも塩対応だぜ!」

「いや、だって嫌いならわざわざこんな付き合わないしさ、信頼してるからこそ、そう言う態度して平気って思ってるんじゃないかと!」

「おー…成る程な。なーるほーどなー」


…うん、何かある意味で言っちゃいけない事言った気がするけど多分そう言う事だと思う。
まあ、これで何かあってもしばかれるのはニヤニヤ笑ってる達毅センパイだしね!
とにかく、本人の口から気持ちを聞けたのは良かった。
浮かんだ文字で見るのと、実際聞くのとは全然違うし。
…ちゃんと皆が皆の事信用してるって分かったしね。
小鳥遊センパイも、もっと周りに気持ちを伝える事が出来る様になると良いなあ。
あたし応援しちゃう!

もし秘密がバレても、クレハセンパイは受け入れてくれると思うし。
皆優しいから、きっとこの仲良しは続いて、ハッピーエンドになってくれると思うんだ。



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