恋2
蘭 恋は悩む。
…最近、気持ちが悪い。
何と言うか、そう、清慈。
清慈の事だ。
前までは何とも思わなかった。
昔からワガママを言っても、嫌々言いつつ聞いてくれた。
勿論、大きな苦労をかけている事は分かっていたが。
成長した今では、このぐらいなら大丈夫だろうと自分なりに考え、それで清慈と付き合っているつもりだったのだが…最近、胃が痛そうな姿を見ると自分も胸が痛む。
こんな事は今までなかったのになあと、そんな戸惑いもあり恋は気持ち悪くて堪らなかった。
罪悪感と言うものなのかは分からないが、とにかく清慈とどう接すれば良いか分からなくなった恋は、いつの間にか彼を避けて過ごす様になっていた。
クラスメイトから「喧嘩したの?仲直りしないと駄目だよ」と言われても避ける…筈だったのだが。
「おい」
「…」
「何か言え」
数日後、普通に捕まった。
どうやら恋の思っている以上に清慈は足が速かったらしい。
腕に大人しくぶら下がりながらも決して口は開かず、無言が続くと清慈は目に見えて苛立っていた。
「…いきなり避け始めるわ話しかけたら逃げ出すわ何だお前」
「…」
「何考えてるのか知らんが他の奴に迷惑をかけたら困る。それに、お前が何かやらかしてアイツが帰ってくるのも凄く困る」
「だって…清慈が、悪い…」
「は?」
「うううう!薬草が悪いんだああああ!うわああああん!バーカ!バーカ!うあああああああ!!」
「何故!?」
急によそよそしくなった幼馴染みを捕まえたら今度は泣き出すと来た、これには清慈も混乱しているだろう。
清慈が何を言っても毒草だの雑草だのランクダウンさせつつ泣きわめくだけだったので、泣き疲れるまで待つしかなかった。
「………お前、あんなでかい声出るんだな」
「…意外と出た……」
30分後、あれだけ泣いておきながら喉が痛いとの理由ですっと泣き止んだ。恋自身もその切り替えの良さには驚きだった。
清慈の眉間の皺が濃くなったのは言うまでもない。
だが泣き止んだ所で理由を話せる訳もなく、再び沈黙が続くのかと思ったのだが、きっと話さないだろうと察したのか清慈が口を開いた。
「…さっきも言ったがお前が何を考えているのかは知らん。興味もない。でもあれだ…調子狂うだろ」
「…調子狂う」
彼がそんな事を言うのは、何だか意外な感じだった。
そうか、でもずっと一緒に行動してたのだから調子が狂うのは確かにと恋は納得した。
「俺のいない所で何かをやらかして最終的に巻き込まれたり、突然小夜が帰ってきたかと思えば全て俺の責任にされたり、クラスメイトに無駄な心配をされたり、近くにいても迷惑だがいなかったら不安による胃痛でもっと迷惑だ」
ああ、でも数日だったがこの説教は何だか懐かしい。
いつもはこれを邪魔するんだと思い出した。
例えばこんな風に
「友達いないから、ぼくがいなくて、寂しかった、だけのくせに…素直、じゃない。ぷふー」
「ぶん殴るぞ」
清慈の眉間の皺が更に濃くなった事に、更に吹き出す事になった。
勿論、清慈の怒りは頂点に達しそうだが。
そんな事はお構い無しに、調子が狂うなら明日からはまた普通になろう、恋は満足げにそう思った。
(お姉ちゃんだけ除け者ーーー!!!)(何か、声が…)(ああ…近くにいるんだろうな…)
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