光咲3
 


あたしの名前は桜井 光咲。
話の前に大事な事だから、これだけは言っておく。
あたしは決して貧乳ではない。
人より発育が遅いだけ、周りの人は発育が良いだけ。
今はなくても、一年後には…巨乳とは言わなくてもセンパイぐらいはあるはず。
そう、美乳だ。
だから別に同居人のおっぱいとか、半天使さんのボインとか、そんなものに嫉妬などしていない。
本当だ。
もし嫉妬乙とか思った人は後で体育館裏に来て欲しい。
…さて、大事な事を話終わったので本編に移ろうか。
センパイ達も知らない。
日記にしか書けない、あたしの話。


――――――――――――


「光咲ちゃんってお仕事してるのは知ってるけどどんなお仕事なの?情報屋さん?ってのは聞いた事ある気がするけど」

「ただのバイトであんな立派なマンション住めねえもんなあ。小鳥遊も気になるだろ」

「別に」

「気になるだろ!?」

「別に」

「ま、まあまあ先輩。小鳥遊君はそう言うの気にしないから」

「えーなんだよー!」

「馬鹿は逆に気にしすぎじゃねえの。…俺はモミジの持ってる焼きそばパンの方が気になる」

「え、あ、食べたいんだね!半分あげる」

「えーっとだな、それでだ。結局どんな仕事なんだよ桜井」


ついさっき、雑談混じりにそんな事を聞かれた。
まあ、いつかは聞かれるだろうなあとは思っていたけど。
そりゃそうだ。高校生が一人でマンションに住めるような、そんなお金を手に入れられる仕事なんて普通じゃない。
もしセンパイの立場ならあたしだって気になる。


「あたしの仕事?それはね」


…あの時は人を助ける仕事って言ったけれど、実はマフィアとかヤクザ、そーんな感じの人達に情報を売る仕事をしています。
情報屋っての自体は間違っていない…助ける人が良い人とは言ってないけど。
漫画とかでいるけれど、実際には想像つかないよね。
水商売の方がまだ現実味ありそう。
でも本当なんだよ。
あたしは自分の能力が好きじゃないけど、生きていく為にはそれしかなくて。
必死でそんな事してたら、お金だけは何だか沢山になった。
それを見てると、嫌いなのに利用して生きてるんだって考えて勝手に落ち込むけど。
まあ、でもそんなのでも悪い事ばかりではないんだ。
例えばセンパイと会えたのも、あたしが学校をサボりがちだったからだし。
おかげで学校に行くのが楽しくなって出席する事も増えたんだよ。
友達と遊ぶ楽しさも知った。
誰かに相談する事も知ったなあ。
まあ、仕事はより憂鬱になったけど。


「……?なに?」


あとは、目の前で首を傾げているこの子。
今一緒に住んでいるんだけど、この子に会えたのも仕事で行った先。


「何でもなーい」

「そっか。今日の光咲は変だね、ツバキ」

「にゃーん」


この子会った時はここまでとは思ってなかったけど、かなりの猫好きらしい。
この前部屋を覗いたらぬいぐるみだったり、マグカップだったり、物の大半が猫グッズで驚いたよ。
あ、そう言えば、これは小さな秘密なんだけど。
…あたし、犬派です。
いや本当秘密でもないけどこれ。
遊ぶのが大好きで表情が分かりやすくて人懐っこくて、可愛いと思うんだ。
まあ、猫も可愛いのは可愛いけど。


「あたしも何か飼おうかなあ」

「猫?」

「いや犬」

「犬…えーっと、あ、ぽめらにゃん?とか可愛いよね」

「良いよねー、何か猫みたいなの混じって名前違うけど。わたあめ、もふもふ。あ、良さそう」


……ポメラニアン、飼おうかな。
まあ、犬は前向きに検討するとして、次の秘密。

同じ様に能力持ちのセンパイが二人いるんだけど、あたしは二人の秘密を知ってるんだ。
あたしのがそう言う能力だからね。
まあ、過去に何も事件起こしてない能力持ちの方が珍しいんだけど。
普通の人間が起こした事件とは違うし、自分から望んで悪用しない限りは、ひっそりと処理されてニュースにならない事もあるんだけどね。
だから、そう言うの知らない人も多い。
あたしも誰かにバラしたりはしないよ。
センパイ達が好きなのもあるし、二人は事故だったのも知ってるからね。

…あ、そうだ仕事の話に戻るんだけど、あたし明日から暫く家には帰ってこれないみたい。
まあ、だから今この長い日記を書いてるのだけど。
学校にはいつも通り通うから、センパイ達には会えるしまだ良いんだけどね。
今回は情報を売るだけじゃなく何か変な人体実験?とかしてるヤバそうな組織に潜入してみようかなって。
…実は前にも一回やったんだけどね。
そして実は実は、潜入先で上司となってる人にはこれバレてるんだけど。
その人は実験さえ出来ればどうでも良いって普通に情報をぽいぽいこっちに寄越してくれる。
やってる事はともかく良い人?だ。うん、あたしにとっては。
ちゃんと学校にも行かせてくれてるし。

うーん、取り敢えず、そろそろ日記は終わらせて準備をしよう。
そうそう、最後に。
一人の時は知らなかったんだけど、行ってきますって言ったら気を付けてね、行ってらっしゃいって言ってもらえる。
ただいまって言ったらお帰りなさい、お疲れ様って言ってもらえる。
皆がそれを言ってくれるのが、今すっごく嬉しいんだ。
だから、それも一応この仕事やってたおかげなんだなって。
まあ、だからって仕事を好きになったりはしないけど、でも前よりずっと頑張れると思う。

それじゃあ、行ってきます。



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