始まりのお話
 


出会ったのは私が七歳の頃でした。
そう、大切な友達に出会ったのは。





「あ、あぶない!」


と、言ったのも遅くボールは道を歩いていた白髪のお姉さんに当たる。
お姉さんは私とボールを見比べ、少し考えた後溜め息をつきながらボールを持って来てくれた。


「ごめんなさい…」

「反省しているのなら何も言いませんよ、貴女も故意でやった訳ではないようなので、ボール遊びをするならもっと周囲に気を配りなさい」

「うん、ありがとうお姉さん!」


その時は、ただそれだけの出会いだと思っていた。
数日後、私の周りではある噂が流行り出す。





「最近この辺りにはお化けが出るんだって」

「白髪の女性で羽根があるんだけど、方っぽは白くて方っぽは黒いんだ」

「昼間は人間に化けてるんだけど、深夜に出会ったら食われてしまうんだよ」

「怖いね」

「怖いね」


詳細を聞くと、誰から回ってきたか分からない、でも見た人はいるんだよ。何てよく分からない答えが返ってきたから何だ、やっぱりただの噂かで済ませたのを覚えている。
でもその後ベタな展開に、噂を信じてなかった私がその噂に遭遇する事になった。





「お嬢ちゃん、こんな遅い時間にお一人かな」

「うん、お使いおそくなっちゃって、今から帰るんだよ!」

「それは偉いね、お嬢さんは良い子なんだ…良い子だから僕ガ食ベテシマオウ」

「…はい?」

「お腹が空いていてね、飢え死にしそうなんだよ」

「えっやだ!たべられたくない!」

「人間、それも子供が逃げられるとでも」


ああ、こんな事なら信じておけばよかったなあ…そうすればきっと用心して食べられる事なんてなかったんだ。
でも、噂だと女の人だったから信じていても意味はないのかも知れない。
死にたくないと思う一方で諦めもあり、恐怖から目を閉じていると「下級如きが私の友人を殺せる訳ないでしょう」何て頭の上から声が聞こえた。





「ちょっと、いつまでそうやっているんですか」

「…あ、この前のお姉…さん…?」

「こんばんは、御嬢さん」


どうやら少し気を失っていたみたい。
目を開き声をした方を見ると、そこにはこの間ボールを拾ってくれたお姉さんがいた。
ただ、その時とは違って背には黒と白の翼がある。
あ、この人が噂のお化けだったんだ!そう思うと同時にある不安も出てくる



「えっと、お姉さんも…わたしをたべるの?」

「…ハァ?」

「だ、だってかみが白くて、黒と白の羽根をもつお化けが深夜にひとをたべちゃうって」

「貴女、そんな噂を信じているんですか」

「しんじてないよ!でも、あの…ごめんなさい」

「…別に、怒ってはいませんよ。それに噂があるのなら私の事を忘れた方が良い」


…そりゃ、助けてくれたんだしそんな訳ないよね、何てしょんぼりしてたらそんな事を言われた。
え、助けてくれたのに、折角知り合えたのに、忘れろって?
私の事友達って言ってくれたのに?そんな人を忘れられる訳ないじゃない!


「忘れたくない!だってお姉さんおんじんだもん!」

「いや、貴女先の事考えて言っていますか?後悔しますよ」

「だってお姉さん私のことともだちって言ったよ、友達といてこうかいなんてしないよ」

「あれはあの時の台詞を真似しただけで」

「じゃあ今話してるから私とお姉さんはともだち!良いでしょ!」

「ハァ…勝手にしてください」

「うん!かってにする!」


最終的に溜め息をつきながらも了承してくれた。持ち前の強引さがこんな所で役立つとは!
あと友達ついでに契約だか何だかをした。よく分からなかったけど、これがあればいつでも私の所に駆けつけてくれるらしい。
兎にも角にも、私に新しい友達が出来た。そして、このお姉さんがこれから先の長い時を共に過ごす大切な親友となるのです。





(あ、お姉さんなまえは!)(…アイリスです。アヤメでも良いですが)(アイリスちゃんね!私はクレハっていうの!よろしくね!)(はいはい)



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