逹毅1
 


朱館 達毅は考える。
何故、自分は尊敬されないのかと。
クレハはまあ、普通。
だが、曽良や光咲は厳しい。
堅苦しいのは苦手だし先輩後輩関係なく来てくれた方が楽しいもの、嫌と言う訳ではない。
ただ、ばかきちだのと呼ばれるのは流石に納得がいかなかった。


「岡崎…」

「はい」

「何で俺…尊敬されないんだろうな」

「エッ」


思いきって普通であるクレハに聞いてみたら、この反応である。
「そんな事ない」や「尊敬されてる」と言ってはくれるが、彼女は顔に出やすいのでバレバレだ。
必死にフォローの言葉を探す姿を見て、申し訳なくなり余計に落ち込む。


「無理すんなよ…分かってるよ…ぐすん」

「いや、あの、えっと…アイリスちゃん!アイリスちゃんならどんな人が尊敬されるか分かるよね!」


クレハが隣を見ると、話を振られた方は巻き込むなと言わんばかりの視線を向けた。
アイリス…達毅の記憶だと確か彼女は自分の同級生で、「鈴原 あやめ」と言う名前だった気がするが。
まあ、きっと愛称だろう。
少し悩む素振りを見せたあと、彼女は「貴方には無理です」とハッキリ言った。
殆ど話した事すらないのに、何て容赦のない。


「好意にも種類があります。例えば生徒会長…何て言ったら多くから尊敬されると思いますが」

「ありがちだな!でもソイツは尊敬されるな!」

「貴方は生徒会長になれるような器ではないでしょう。運動は得意ですが、勉強の成績は悪いですよね」

「おうよ!」

「先輩そこ誇る所じゃないです!」

「で、貴方は親しまれるタイプの人と言う事です。身近に感じる存在だから皆その様な態度を取るのですよ」


…つまり友達感覚?
自分から質問しておいて、いざ真面目に回答してもらうと分からなくなった。
アイリスには「絶対理解してないな」と言う顔で睨まれている。
いや、取り敢えず確実にわかる事は


「俺は好かれてはいるって事だな!?」

「そうなりますね」

「だから平気ですよ先輩!」

「おう!尊敬されてもかったいだけだもんなー気楽なのが一番だぜ」


あっさりと納得。
何だ何だ、悩んで損をした。
答えが出れば元気になるもの、上機嫌で自分の教室へと戻る。
自分はこのまま身近な先輩で良いんだと。
後ろから何かボソッと聞こえた気はするが、全く気にならなかった。




達毅の姿が見えなくなった頃。


「…やっと静かになりました」

「アイリスちゃんもしかして適当に言った?」

「いいえ、私はいつでも真面目です」

「まあ…解決したなら良いか!」


さっきまで落ち込んでいた先輩が元気になったし、良かった良かった。
逹毅が出て行った扉を見ながら、クレハはそう安心したのだった。



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