光咲1
一人ぼっちの帰り道はとても切ないものだなあと思った。
うーん、最悪。
自分はこれしか出来ないからと選んだ事だけど、最近はふと逃げ出したくなる時もある。
仕事か友達かって聞かれたら、今なら友達を取るんだろうな。
「つか…あたしも参加したかったなあ」
一人言を溢す。
センパイ達が一ヶ月も前から計画してたクリスマスパーティ。
あたしは仕事が入って参加出来なかった。
しかも、終わったのはクリスマスを過ぎた深夜。
もう絶対あいつらからの依頼は受けねー!何て、心の中で文句を言いながらとぼとぼ歩いてるのはそう言う事。
「プレゼント何ていらないからせめて休みが欲しかったよ。くそー、サンタのバカヤロー」
あまりの悔しさにサンタさんに八つ当たりもしたりして。
休みだったら皆でわいわいやって、美味しいもの沢山食べて、いい気持ちで寝て、その後はもう冬休みだー!ってはしゃいでた所なのに。
…まあ、今更こんな事言っても戻らないからね。
そんなむすっとした顔で歩いていると。
「ん…?」
前に人影がある。
それも、見慣れた感じの。
「葵さんだあ。どしたの」
「……ん…光咲の事、待ってた…」
寒さよりも眠気なのか、うとうとしてたみたい。
もっと遅くなってたら凍死しちゃってたんじゃ…!真っ直ぐ帰ってきて良かった!
「すんごい眠そうだけど」
「へいきー」
「じゃない!」
ま、まあ何ともないなら良いのか…なあ?良くないけど。
体冷たいし、何かまだ眠そうだし。
元々ぼんやりしてるイメージだから、心配である。
それでも一応目は覚めたのか、袖をくいくいと引かれた。
「光咲ー」
「なーに」
「クリスマスプレゼント」
あらおねだり何て珍し…と思ったらどうやら違うらしく、小さい箱が手渡される。
…えーっと、この子はこの為に寒い中ずっと外で待ってたのだろうか。
「…あのね、中で、一緒に暮らしてるから部屋の中で渡せるからね」
「ダメ?」
「いやほら夜遅いし!つか寒いし!?嬉しいの!凄い嬉しいんだけどテーブルの上に置いて先に寝てても良かったんだよ!あとあたしプレゼント用意してないし!」
「…んー、直接渡したかった。ダメ?」
「〜っ!ダメ…じゃない…!」
「そう、良かった」
結局、嬉しさに負けるあたし。
両親はどうだったっけ、何でもくれた気がするけど。
でも、それとは違くて、こう本当に普通な感じにプレゼントをもらうのは初めて。
どうしよう、本当に嬉しい。
ただ、何も用意してなかったから申し訳なくなる。
「…今度葵さんの分のクリスマスプレゼント買いに行こう」
「…良いの?」
「あたしがもらってそっちにはなしって変でしょうが!とにかく今日は寒いんだからもう帰るよ!」
「うん、楽しみ」
「楽しみにしてろしてろ!……あ、そうだ。手繋いで良いかな、なんとなく」
「…良いよ」
よし、無事約束もしたし、早く家に入らないと凍えちゃう。
葵さんの手を引いてずんずんと進む。何となく言った事とは言え、何か少し照れくさいねこれ。
ああ…友達って言うのは本当に良いなあ。
特に葵さんはあたしの事友達と思ってくれてるか分からなかったし…でも、多分これは認めてもらえてるよね?
さっきまで最低だった気分も今は最高。お腹は空いてるけど。
「あ、クリスマスっぽくないけど…お鍋の用意しておいたから、帰ったら食べようね」
「マジで!?食べる!!」
うん、もっと最高な気分!
友達って最高ー!
あまりのテンションの上がりっぷりに、ちょっと引かれてる気がする。
そんな事は気にせず、繋いだ手をぶんぶん振りながら帰り道を歩いた。
(ただいま我が家ー!)(お鍋温める)(うん!あ、プレゼント開けて良いよね!)
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