鬱都 闇花の話
 


私の名前は鬱都 闇花。
好きな事は映画鑑賞、嫌いな事は…色々。
そして私が雨の日に外を歩けば車に泥水をかけられ、何もない所で転び、何故か上から植木鉢が落ちてくる。
そう、私は不幸な女。
この世界に生を受けて17年、起きたのは悪い事ばかり。
そんな不幸な女であるこの私…先日とある高校に転入した。
人によっては良い事もあるだろうけど、私にとっては悪い予感しかしない話だった。
ほら、入ってから数日経つが友達なんてものは出来ていないし、それどころか一部のクラスメイトには避けられている気がするわ。
きっと、きっと私から溢れる不幸オーラみたいなものが皆には見えているに違いないのよ。
普通、転入生と言えば「どこから来たの?」なんて皆から聞かれると思うのに、私にはそれすらなかった。
……一人を除いて。


「鬱都さん!良かったら今日の放課後一緒に遊びに行かない?私鬱都さんと仲良くなりたくて!」

「え…あの、今日は用事…は、ないけれど…あの…」


転入初日から、一人だけがやたら話しかけてくる。
名前は確か…クレハだったかしら。
ああ、ついてない。私は不幸。鬱、超鬱。
私は彼女みたいな幸せです!希望ありまくりです!オーラを振り撒く人は苦手なの。
それなのに、何故そう言う人間に限って私に構ってくるの?
こんな眩しい人の横に並んでみなさい、きっとより不幸な事が起きる。
こう言う人達の分まで私が不幸を背負う、きっとそうに違いない。
そんなのは絶対…ごめんだ。


「あ、もちろん嫌なら無理しなくて良いからね…!だって会ったばかりなのにいきなり誘われてもビックリしちゃうもんね!」

「いや、あの…嫌…と言う訳、では…えっと…お、屋上行ってきます!ちょっと待っててください!」


…余りにテンパって出てきてしまった。私の馬鹿!
そこはちゃんと「お前なんかと誰が行くかよ」とか言えれば良いのに!
馬鹿!声上ずってるし!馬鹿!もう最悪!鬱過ぎる!死にたい!
そんな私の屋上へ向かう足だけは無駄に速く、まさに逃げる様だった。


――――――――――――


「あー!私は!アンタの事嫌いなのに!何で話しかけてくるんだー!!!」


屋上に出ると同時に叫んだら、屋上に向かってきていたらしい足音が遠ざかっていった。
うん、まあ多少鬱だけど姿を見られた訳じゃないのでまだ良いわ。
それよりも鬱な事があるもの。
だってだって、私はアイツと違って、幸せに生きてないし。
嫌な事があった時に愚痴る友達何かもいないし…!
誰かに「嫌な事あったの、うわ〜ん」なんて相談した程度でスッキリするほど単純に出来てないし!
そもそも人としての出来が違うし!
なのに何で何で何で話しかけてくるの!?
…あ、分かった!友達じゃなくて都合の良い人目的なのね!
闇花知ってるんだから!分かっちゃったんだから!
都合の良い人になんかならない!
絶対お前の誘いになんか乗るもんか!
嫌い嫌い!アンタなんか大嫌い!
私は家に帰って、個人的超名作恋愛映画「紅い月と兎の恋」を観直すんだから!
断る!次誘われたら絶対断る!


「あ、鬱都さん!」

「ひゃいいい!?」


心の中で暴走していたら、いつの間にか背後にク…いや、ハッピー女さんが立っていた。
しまった…!もう昼食の時間だったのか!
……あれ?と言う事は色々考えている間に私は授業を一つサボった事に…?
あああああ鬱!何て鬱!嫌!死にたい!
ハッピーの周りにはいつも行動してるらしい取り巻き達もいるし!
こ、こんな状況でどうすれば良いの。
もし断って怒りを買ったら?
赤髪の人なんか不良そうだし目をつけられたら?
…ええい!勇気を出すのよ鬱都 闇花!
今まで散々不幸な目にあって来たじゃない!
目をつけられエロ同人の様に乱暴されようと!大した事じゃないわ!
どうせ不幸なんだから、いくら大切にした所で結婚も何も出来ないもの!
さあ勇気を出して鬱都 闇花!きっぱりと断るの!


「えっと…岡崎さん…さっきの、返事だけど、ね…」

「あ、そう!それの事!詳しく説明してなかったなって。じゃーん!これ!「紅い月と兎の恋 第2章」のチケット!これを鬱都さんも一緒に見に行きたいなあって!」

「………」

「ダメ、かな?」

「い、行きます…!」


…つい了承してしまった。
も、もう本当に鬱!死にたい!
映画で釣るなんて!卑怯!ズルい!
……ふふふ、岡崎 紅葉、絶対許さないんだから。
私の不幸に巻き込んで、アンタも不幸にしてやるんだから!
絶対!アンタの言う友達になんかならない!
き、今日は取り敢えず一緒に行ってあげるけど!不幸になる時を覚悟して待つと良いわ!



(ううう、名作…超名作の続編はやっぱり名作です…)(楽しんでくれたなら良かった!またこうやって出かけたりして仲良くなれると良いな!)(はいい……って、あー!また!また返事しちゃった!超超超鬱!死なせて!)



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