突然の妹さん
 


「わあああああ!」

「あははははー!」


こんにちは!私クレハ!今世界がぐるぐる回ってるの!
理由はあの…突然目の前に人が降って来て…そしたら私の顔を見るなり叫び出したと思ったら、腕を掴まれて色々な場所に連れ回されてる感じで。
とにかく、あの…そろそろ、限界かなって!


「し…死んじゃう…っ!」

「え?ありゃりゃ!人間ってば弱っちいんだなあ。ごめんね?」

「平気…れす…」


や、やっと止まってもらえた…!
視界は歪んでマトモに立てないし、とても気持ち悪い。
今どこにいるんだっけ?あれ、私ってクレハだよね?もうそんな感じ!
た、多分悪い人ではないと思うけど、学校サボる結果になっちゃったしどうしよう!
というか、大事な事があるんだけど


「そろそろ名前と用件を教えて欲しいです!」

「杏です!あっしの兄ちゃんを探すのを手伝ってください!」

「はい!!」

「あざじゃーっす!」


……あれ?
何か、勢いに任せてOKしちゃった!
これが光咲ちゃんの言ってた疾走感がどうこうって奴かな?違う?
うーん……ま、まあ人助けは大事だよね!
学校ももう間に合わないし、それに理由は分からないけど、私を選んでくれたなら頑張る!
そんな訳で、何だか変なノリのまま杏さんのお兄さん探しをする事になった。


――――――――――――


「あの、杏さんはどうして私の所に来たの?私普通の人間だから…何でだろって」

「んー?何かねえ、クレハちん噂になってたよ。色んなのと仲良しだとか、悩み事聞いてくれるとか、それで小生の兄ちゃんの事も知ってるかなーっとね」

「そ、そうなんだ…」


あの後自己紹介と軽い説明をして、改めてお兄さん探しに出発していた私と自称優しい悪魔の杏さん。
悪魔って個性的な人が多いんだね!
あ、でも今度はちゃんと私に合わせて歩いてくれていて、優しいって認識は大丈夫みたい。
それにしても、人間どこで噂されるか分からない…!
杏さんから聞いたお兄さんの情報を纏めると、黒い格好、人間き、本が大好き、オレンジ色の髪の毛。
……これに対する私の感想は、多分凄い知っていると言う事だけ。
で、その人がいそうな所をさっきから回っているんだけど全然見つからないんです。
おじさんも今日は見てないって言ってたし、今日はお出かけしてないとかなのかな?
でも私お家知らないから、きっとこれが詰んだって奴だね…!
それでも何とかしようと、悩んで数分…私の様子を見ていた杏さんが口を開く。


「…うーん。多分これ今日もう捕まらないだろなー」

「えっ!で、でもまだ時間あるしもうちょっと回ってみればいるかも」

「いや何か雰囲気的にクレハちんもういそうな場所知らないだろうなあって」

「ううっ!」


流石妹さん!す、凄い鋭い…!
確かに、もう本当に心当たり何てないし…会えないのに変に期待させちゃうのは悲しいよね。
でも、何か少しは役に立ちたかったんだけど…。


「あー、あのね。確かに兄ちゃんは見つかってないけどさ、杏さんね、嬉しかったんだよ。人間は本当に親切だと思って。だからクレハちゃんの事役立たずとかそんな事全然思ってない!」

「杏さん…」

「ここまでありがとうね!あとは自分で探してみるよ!じゃ、また会おうず!」


きっと落ち込んでいたのが顔に出ていたんだろうけど、ぽんぽんと頭を撫でられる。
何だか、アイリスちゃんとはまた違ったタイプのお姉ちゃんって感じだなあ。
杏さんはにっこりと笑うと、お礼を言う間もなくそのまま飛んでいってしまった。
うん、やっぱり優しい人だ。


「緋桐さん、なんで会ってあげないのかなあ」


きっと何か理由があるんだろうけど、兄妹が揃ってる場面を見てみたいなあなんて。
…杏さん、緋桐さんに会えると良いね!
同じ街にはいるからきっと近い内に会えるはず。
再会して、仲良しな二人を想像したら一人でちょっと笑えた。

よし!やっぱり私もアイリスちゃんに頼んで探しに行こうっと!
そうすれば、きっと早く見つかるよね!
…その前に、学校行ってないのバレてすっごい怒られるかも知れないけど。
でも帰らないといけないし、とにかく覚悟を決めよう。
怖いので知り合いの人に見つからない様に、素早く、こっそり帰路についたのでした。



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