怪しい研究員さん
 


科学も進歩すると魔法と区別がつかないだか何だか、そんな事どこかで聞いたなあ。
うん、まああたしは科学の知識もないし魔法も使えないからよく分からないけど。
でも、そんなに成長したら良くない事もありそうだよね。
今お世話になっている人のやっている事って、人工的に天使を作るとかそう言うものだから、もし成功したらそれも魔法と同じになるのかなって。
…つまり人体実験だから、結構ヤバいんだけど。
あれ、何か既に良くない事起きてるねこれ。
取り敢えずここにいると色々凄い事があるんです。


――――――――――――


「ゼル様はさー、何でこんな事してるんすか」

「ん?単純に、そう言う事に興味があったからだよ。どんな人も進んだ道を極める為、進化させる為にやっていると私は考えるね」

「うーん、まあそりゃそうなんだけど、何で人を使った実験にいっちゃったのかなあとか」

「それが私に合っていたからだよ」

「あ、はい」


あたしが今話してるのが一応、上司になるゼル様。
話している分には普通の人なんだけど、やっている事は色々凄い。
うん、教えられないほど。
まあ学校にもちゃんと行かせてくれるし、情報もぽんぽんこっちに流してくれるしであたしにとってはいい人なんだけど。
そんな無差別に人を実験体にする様な人でもないし。
ただ、部下の人の何人かは怒らせたのか何なのか頭が動物になっている人がいるけど…で、でも基本的には話が分かる人の筈。
…多分ね。
そんな感じで、怖いけれど…何故かこの人に懐いたあたしは、ここで他愛もない話をするのが少し楽しみになっていたり。
…見た目は。不健康そうな小さい女の子だしね。


「何か失礼な事を思われている気がするが…桜井さん。君に聞きたい事があったんだ。」

「はい?」

「君の知り合いで気になるのがいたんだけどね。いや、何も手は出さないから安心してくれ。確か…白い髪の」

「あー…アイリスさん?」

「多分それだ。彼女を見ていれば少し天使、そして悪魔についても何か分かりそうな気がするのだがどうだろう」

「どうだろうって…な、何が」

「今度遊びに行く時は。私も仲間に入れてくれないかな」

「…えっ!?」

「この姿ならさほど怪しまれないと思うし迷惑はかけないよ。まあ判断は君に任せるが、良い返事をもらえると嬉しいかな」

「ええー!」


…えーっと、何だろう、この。
多分断っても怒らないだろうけど断ってはいけない様な感じ。
…もしかして、あたし喋ったら良くない事とか無意識にペラペラ喋っちゃってたのかな。
きっと大丈夫だと思うけど、そりゃ興味持つよね…そんな存在がいたら。
…でも、やっぱりこの人の事信用し過ぎかなあ。


「…と、取り敢えず本当に何もしないのと、あたしが監視してても良いなら」

「ああ、構わないよ。…しかし君は思ったより疑り深いのかな」

「いやそう言う訳じゃないけど」

「冗談だよ、君がそう感じるのは当然の事だ。それじゃあ楽しみにしているからね、お姉ちゃん」


…もしかしたら意外とお茶目だったりするのかも知れない。
でも本当に怪しまれずにいけるのかなあ…アイリスさん結構警戒心強いし…うーん。


「ま、まあいっか!何とかなるさ!」


とてつもなく不安、不安だけれど…何かもう一周とか回って楽しそうだと思う私もいたのである。
あーあ、本当に話してるだけならまだいい人だと思うんだけどなあ。

…最初の話に戻るけど、化学とかが魔法と見分けがつかないほど成長したらどうなるんだろう。
本当に人工的に天使や悪魔が作れる様になったら、魔法を使う才能がない人も使える様になったらどうなるんだろう。
きっと凄く便利なんだろうけど、良い事ばかりじゃ絶対ないよね。
そもそも、こんな実験が便利な世の中になる為にやってるものなのか謎だけど。
でも、危ない事に足突っ込んでまで進みたい道なんだろうなあ、あの人にとって。
やっている事は理解出来ないけど、その真剣さはきっと好きで、だから懐いたんだろうなと思った。



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