幼馴染みは苦労人
 


「パから始まる有名人ってなーんだ」


授業中の教室に明るい声が響く。
今年の担任は、突然謎の問題を出すのが趣味の様だ。
まあ、指名されなければ何の問題もない。


「はい、じゃあ蘭さん」


今回指名されたのは、自分がよく知る名前だった。
あれにまともな回答は期待出来ないが、さてどうなるか。


「……パー○ン」

「うん、出来れば実在者が良いな、今の世代知らない子もいると思う」


ああ、予想通り。
あまりにもそのままな展開に、小さく溜め息を吐いた。


――――――――――――


…昼休み。さっきの馬k蘭 恋が椅子を持ってこちらへ来る。


「セージ、セージ」

「拒否」

「まだ、何も、言ってない…」


さて、彼女とは一応幼馴染みと言う関係ではある。
クラスメイトが前に「男女の幼馴染みってゲームの様な展開が期待できるよな!」と言ってきた事があったが、そんな展開は1mmも存在しない。
と言うより、存在して欲しくない(クラスメイトはノートで叩いておいた)
恋、正確には姉の方が原因としては大きいが、昔から色々苦労させられている。
一人減って少しマシになった程度だ。


「用件ー、用件を、聞け」

「人にものを頼む態度じゃない、拒否」

「………マンドレイク」


…どういう事だ。
毒の方向で言いたいのか、日頃から薬草扱いしたり、人をなんだと思っているんだこいつは。
まあ、注意をした所でどうせ直らないだろう。
ついでに拒否した所で、大人しく帰る事もない。
俺の意見など無視して、勝手に喋りだす。


「自己紹介の、紙、どう思う」

「は?」

「友達欄、ない。人、いない」


恋が手に持っている紙。
自己紹介…担任が早く皆と仲良くなれる様に、と言って全員に配ったものだ。
小学生かとは思ったが、それ自体は問題ない。
ただ、自分と恋には友人と言うものが抜けている。
これも小夜とか言うあれのせいだ。
友人が欲しいだとか、いないと困ると言う訳ではないが。
大体、何故生徒の交流関係まで知る必要がある、勝手にやらせてくれ。
もうペットの犬とでも書こうかと。
…とは言ってもあの担任の事だ。恐らく後日教室に貼り出される。
人によっては公開処刑になるに違いない。
自分も仕方なく、仕方なく目の前の奴の名前を記入しておいた。
寂しい奴扱いを受けるか、関係をからかわれるか、その二択しか存在しない。


「セージ、セージは、薬草だけど、ぼく、セージ書く。これで、解決、だー」

「毒殺してやろうか」

「あーうーあ」


ああ、話をしているだけでも凄く疲れる。
しかも、薬草とハッキリ言いやがって。
恐らく苛立ちが表情にも現れているが、そんな事知らんと言った具合で、本人はマイペースに寛いでいる。
もうその態度すらムカつく。


「おこりんぼ」

「誰のせいだと思ってやがる…胃が痛くなってきた」

「保健室へ、どうぞ」

「お前…絶対覚えてろよ…」


元凶に見送られ、保健室へと向かう。
何故自分はあれと一緒になってしまったのか。
まだ15歳だと言うのに、既に人生をやり直したいとさえ考えてしまっている。
蓄積した結果、最近は胃も痛みだした。
なら、関係を切れば良いと自分でも思うが、自分の見張っていない所で何かやらかしていたら、自分しかあれを止められないのでは、そんな不安が何故かありそれも出来ない。
…まあ、ここまで来たなら代わりの奴が現れるまで耐えてやろうじゃないか。
大丈夫、自分なら出来る筈だ。
ストレス発散方法だとか、被害を最小限に済ます方法だとか、対策はいくらでもある。
それに、もう姉の方はいない訳だ。一人ぐらい何とかなるさ。

無理矢理にでも自分を励ましながら、保健室の扉を開いた。




(すいません、少し休ませてもらいま…)(あはっ!セージ君良いところに!恋ちゃん知らない?)(せん。そうだ、早退しよう。あとお前も帰れ)



前へ 次へ

[ 8/68 ]






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -