お人形と主
 


彼女の周りには、いつも人がいる。
遠くから見ても、近くから見てもいつも誰かが傍にいる。
人以外にも、殺人鬼や悪魔や、天使?まで。


「あれは天使じゃないよ、天使でも悪魔でもない…中途半端な奴だ」

「そうなの?」


隣から訂正が入った。
そうか、だから羽根がああなのか。
…話を戻そう。
彼女自身はかなり平凡な存在に見える。
まあ、少しお節介と言うか、お人好しすぎるのかも知れないけれど。
それなのに、周囲には沢山の人が集まっている。
それが不思議だ。


「君は最近ずっとその子の事を気にしているね」

「うん、不思議なの」

「…仲間に、輪に入りたいの?君が?」


少し声色が変わる。
もしかしたら、機嫌を損ねたのかも知れない。
素直に言えば、きっと分かってくれるだろうけど。


「違う、気になってるだけ」

「…そうか、そうだよね。君は僕のお人形だから、他の所へ行きたい何て思わないよね」

「うん」

「ごめんね、不安になってしまったよ」

「平気」


一転して今度は申し訳なさそうだ。
私の主は少し、情緒不安定なのだろう。
でも、今日は比較的穏やか。
酷い時は物に当たり散らす事もある。


「それにしても、本当に人気だね彼女は。色が多くて気持ち悪くなってくるよ」


あと…芸術家らしいのだが色が嫌いだとか。
人の事を不思議だと見ていたが、主もかなり不思議だ。
そんな不思議な二人を交互に見比べていると、とても嫌そうな声が上がる。


「…げ」

「どうしたの?」

「オレンジと目が合った…もう帰ろう」


オレンジ…ああ、悪魔の事だ。
どうやら、とても嫌いの様で、急ぎ足で歩いていくのを慌てて追いかける。


「…ああ、でも帰る前にチョコレートパフェを食べて行こうね。好きでしょ?」

「!うん!」


人形の好みを覚えていてくれたらしい…不安定な所はあるけれど、優しい主だ。


「たまにはご褒美もあげないと、僕の茉莉子は良い子だからね」


そう言って珍しく微笑む。
最終的に機嫌は良いみたい。
ご褒美ももらえるし、私にとっても今日は良い日だ。


――――――――――――


「緋桐君、緋桐君ーどうしたのずっと路地裏の方見て」

「いや、虫…うーん、違いますね、ゴミ…そう、ゴミ以下の存在がいた気がして。何しに来たんでしょうね、顔見ただけでイライラしてきた」

「何それ怖い」




(悪寒がする…食べ終わったら早く帰ろう)(うん、帰ったらお薬飲もうね主)(…多分風邪とは違うよ茉莉子)



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