飼い猫の正体(描写注意?)
 


濃いものが苦手だ、と思った。
特ににおい。
例外で料理何かは好きだけど。
父親は毎日お酒臭かったし、母親はよく分からない香水を纏っていた。
きっとそれを思い出すから苦手。
親はもういないのに、未だにその影を怖がるのも弱さなんだろうなあ。
と、そんなお酒臭さも血のにおいで消えた頃にぼんやり


「嫌いなものはこうやってネ、なくしちゃえば良いのサ」

「僕は人間は殺さないよ。光咲と約束したから」

「ボクとしてはその約束を守る理由が分からない、ボクは自分とご主人以外嫌い」

「でもそのご主人と意見合わないね…」

「猫だからネ。種族が違うヨ葵」


目の前にいるのはどう見ても猫ではなく人だけど。
あと僕は血のにおいもあまり好きじゃない。
猫…今は人、椿はさっきまで生きていたものの頭をボール代わりに蹴って遊んでいる。
頭が跳ねる度に血が飛び散って思わず顔を顰めてしまう。
事の次第は、簡単に説明すると僕が悪く、よそ見をしていて人とぶつかった。
その相手は酔っ払ってて、反射的にとにかく謝らないといけないって。
そう思ったのに一瞬の内にその人の首が飛んでいたり、何か人に戻った椿がいたり………ううん、僕もよく分からなくなっちゃった。
とにかく怒らせたのも僕がぶつかったからだし、死んじゃったのも僕が椿を止められなかったからだしで。


「面倒事は避けた方が良い、だから殺すべきじゃない、そんな理由なら分かってあげなくもないけど」

「違くてもあまり殺しちゃダメだよ…」

「エー、でも葵怖がってる様に見えたからサァ。それに酔っ払いとは言えこんな路地裏彷徨いてる奴がまともな訳ないよネ」


…それは、ちょっとブーメランな気が。
見ると、飽きたのかボール代わりにしていた頭をゴミ箱に放り込んでいた。
椿はかなり人間が嫌いらしい。
たまに人になっても、話す相手は僕だけ。


「ボク達みたいな欠陥物が今更仲良しごっこしたり人みたいになるなんて無理だヨ葵。ボクは人間が嫌いだし、葵も大人を怖がる。唯一の共通点だった種族も変わった」

「でも、怖くない仲良しな人も出来たし色々教えてもらえて、楽しいよ。もっと知りたいって思う」

「どうせ裏切る、アイツら。キミと仲良し面するあのピンク頭も」

「……考えを否定はしないけど…信じてみたいから、もう少し待ってくれないかな」


断られるかも知れないけど、僕はあの人達は本当に大丈夫だと思う。
椿は無表情で首を傾げて考え出す。
そして、少しの沈黙の後返ってきた答えは意外にも「良いヨ」と言う言葉。


「…そう言えば気になるなら見に行けって初めに言い出したのボクだ、期待してたのと違う結果だったけど。まあ自分にも原因があるし待ってあげる」

「うん…ありがとう」

「と言うかサ、ボク結果が見えてるのにそれでも信じようとするキミが馬鹿過ぎて可愛いなって思うんだ」

「褒めてないよね」

「うん。で、そんなキミをもう少し見てたいからってのも理由にあるかナ。あ、葵の事大好きなのはホント。ホントだヨ?」

「そう…」


一応目の前の彼は僕の飼い猫らしいんだけどな…。
椿の考えは未だによく分からない。
信頼してない訳ではないけど…。
あと、椿はお酒のにおいも香水のにおいもしないけど、時々とても怖く感じる。
親よりも。


「葵チャン、ご機嫌ナナメかナ?」

「別に………帰ろう。もう真夜中だよ」

「エ?うん、良いヨ。ボクもう眠いし」


そう言って欠伸をすると、椿は見慣れた黒猫の姿に戻った。
ずっと猫のままでいてくれれば可愛いのにね。
自分で歩く気はないらしく、その場で丸まり始めた猫を抱き上げ歩く。

とにかく今は早く帰ろう、きっと遅いから光咲が怒る。玄関かベランダで待ち構えて。
…見つからないと良いな、部屋の前に着くと、音を立てないようにそっと扉を開けた。



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