ch1.黒髪の兄弟 37



何が起こったのか。思考回路が急停止してしまったかのようなルカの頭で一つだけ理解できたは、ルイドが殺されたと言う事実だけだった。

頬にヌメヌメとした感触がして、ルカはようやくハッとした。緑色の生物の体の一部が、気味悪くもルカの頬を掠めているのだ。
ルカは動揺の収まらないまま腰にある剣を取ると、周り一帯に蠢いていた緑色の生物の胴体を一刀両断した。
君の悪い奇声や鳴き声、もしくは悲鳴に近いような断末魔を聞きながら、ルカはルイドを殺した白髪の帝国軍人を強く睨みつけていた。

ルカの恐ろしいほどの殺気のこもった睨みに臆することもなく、むしろどこか満足気にも見える男の表情には、嘲笑の色が浮かんでいた。白髪の男はルイドの亡骸を左足で蹴ってどかし、鮮やかな血溜まりの中に堂々と腰を下ろした。嫌な水音が聞こえ、ルカは吐き気を何とか堪えた。

ルカはその男の様子を見て今すぐにでも斬りつけてやりたい衝動に駆られたが、その瞬間に、緑の蛍光色の生物が一匹飛び掛ってきたため、ルカの怒りの剣先一閃は全てその得体の知れない生物の首に放たれることとなった。緑の生物の血液なのか体液なのか、赤いドロリとしたものがルカの全身に纏わり付く。ルイドと、その生物の赤色が気味悪くルカの吐き気を刺激し続けていた。

「何でルイドを殺した。アンタの狙いは、俺じゃないのか」

極力冷静にそう白髪の男に問えば、その男は無表情で、しかし何かに呆れたように肩をすくめた。

「……わざわざ雑魚を狙う必要もなかろう。だが、雑魚には丁度いい相手かもしれんな。貴様、そいつらの相手をしてみろ」

その男の言葉を合図にしたのかはルカには分からないが、男の言葉に続くように異形の生物達が、一斉にルカに襲い掛かるように飛びついてきた。

「ふざけんなよ……っ!」

軍人の言葉に対して憎々しげにルカは歯を食いしばり、得体の知れぬ緑の生物を相手に、まるで持ちうる全ての怒りを剣の切っ先に注ぎ込むようにして、ルカは激しく剣を振るった。





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