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▼ 絡めた指が愛になる



私の近侍であるへし切長谷部は実に優秀だ。
私の命ずる事は「主命とあらば。」と言って何でもこなしてくれる。無理難題な物だとしても涼しい顔をして。
しかしその反面、自分の事となると無頓着過ぎると思う時が度々あった。重傷になってでも私の命じた
ことをやり遂げようとしてくれる。そのせいか周りの子達は中傷、長谷部が重傷で帰って来るのは当たり前のようになっていた。
私第一で動いてくれるのは有り難いけどもう少し自分自身を労わってあげないと、もし破壊なんて事になったら審神者としての自信が無くなり到底立ち直れそうにない。


「…っう!」
「ほーら、動かないの。ちゃんと怪我治してあげられないよ。」
「この程度、何てことありません。」


このやり取りは何回目だろうか。
既に手入れ部屋ではお馴染みの会話になってしまっていた。こうして私が傍に付いて治してあげないと何処かへふらっと行ってしまいそうな、そんな儚い気持ちに襲われる。その為最近私からお願いして治療をしているのだ。


「もう、こんなになるまで戦えなんて言ってないでしょ?」
「しかし、それでは主命が…俺の居る意義が無くなってしまう…!」
「………!」


長谷部は前の主だった織田信長に下げ渡された過去を私に話してくれた時があった。もしかして彼は主の為にと動いている裏で捨てられてしまうかもしれないという恐怖に怯えていたのではないか?だからいくら怪我を負っても戦い続ける。
勝手な推測をした私は思わず長谷部の手を握り締めていた。こんな事に気付かないなんて私は間抜けな審神者だ。当の本人はいきなり手を握られ驚きのあまり青紫の瞳を揺らしている。


「大丈夫だよ、私は貴方を誰かに渡したりなんかしない。長谷部は私の…私だけのものなんだから。」
「審神者様…。」
「だから、無理はしないでほしい。居なくなったりしたら許さないんだから。」
「…主命とあらば。」


長谷部はいつもの口癖を言った。
でも、いつもの真面目な堅苦しい口振りではなく穏やかな柔らかい印象を受けた。
私はこの手を、この刀(ひと)を手放すまいと心に誓い指を絡めて強く握り直した。


ずっと、これからも。
(…絶対に離さない。)
20150331




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