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▼ 唇に指を這わせ



最近妙に主に避けられているような気がする。
僕が何か粗相をしてしまったのだろうかと考えても一向に答えが出ることはなかった。目を合わせようとしてもすぐに逸らされ、挙句の果てに声を掛けると足早に逃げられてしまうようになった。ん?これってもしかしなくても避けられてるよね?僕、審神者ちゃんに嫌われちゃった?
脳裏に過ぎる度徐々に自分の顔が青ざめていくのが分かった。取り敢えずこの関係をどうにかしないと僕は審神者ちゃんを探す為に歩を進めた。案の定彼女は簡単に見つけられた。


「審神者ちゃん。」
「…っ!」
「…待って!」


また僕の前から逃げ出そうとする審神者ちゃんの手を咄嗟に掴んだ。こうも逃げられてばかりでは流石の僕でも参ってしまう。僕の事が嫌いならその理由を聞きたい。理由を聞いて彼女の為に悪い所を直してまたあの時のような良好な関係に戻りたい。思いを募られると共に掴んだ手に力が入る。


「光忠さん…手、痛い…です。」
「ご、ごめん…!でもいつも僕の前から居なくなるから…どうにかして話をしたくて…。」


よく耳にしていた澄み切った声に急いで手を離そうとしたがまた何処かへ行かれたらと珍しく僕らしくないマイナス思考を働かせてしまい結局指を掴んでいた。それのせいかいつも饒舌に動く筈の口の動きも遅く感じた。僕のどこが嫌なのか聞かなくてはいけないのに、頭の中では分かっていても反面聞きたくないと思っている自分がいる。


「何で…どうして、僕を避けるの?僕の事必要なくなった?嫌いになっちゃった?」
「ちがっ…!」
「じゃあ、僕のこと見てよ。」


彼女の顔を無理矢理覗き込むと白い肌がほんのり赤く染まっているように見えた。まさかと思い更に顔を近づけると林檎のように赤くなっていく。審神者ちゃんが僕の事を避けていた理由が分かると今更ながらなんて自分は女々しかったのだろうと後悔する、かっこ悪いじゃないか。


「ねぇ、君の口から聞きたいんだ。」
「嫌…です…っ!」
「ふーん、何も言わない口にはこうしちゃうよ?」
「んぅ…っ。」


最初は審神者ちゃんの唇に指を這わせていたが一向に話してくれそうもなかったので彼女の口内に指を入れた。手袋越しに伝わるねっとりとした、温かな感覚にくらりと眩暈がした。さて、君が口を開くか僕が痺れを切らすか…どちらだろうね?


さあ、勝負だ。
(ああ、僕の方が部が悪すぎる。)
(早く素直になってよ。)
20150328



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