変化の兆候


「長谷部っ、長谷部っ!」


私は近侍である彼の首元へ腕を回した。
この行動は既に習慣になっていて毎日数え切れないほどしているだろう。
何故習慣づけされたかというと…


「あああ主…!このような事はおやめ下さいと何度も申した筈です…!」
「だって長谷部の反応が可愛いんだもん。仕方無い仕方無い。」
「仕方無くありません…っ!」


抱きついた対象は背後からの温もりに肩を揺らし驚いたがすぐに誰の仕業か分かると頬を染めた顔をこちらに向けた。
そう、この恥じらう真っ赤な顔が見たいからである。好きな子程いじめたくなるっていう人の気持ちが今なら分かる、うん。…って私は中学生かっ!と自分自身にツッコミを入れつつ、首に回した腕を剥がそうとする力に抵抗していた。
とはいっても長谷部の力は殆ど入っておらずやんわりと私の腕を掴んでいる程度、どんな状況下でも主に対して揺るぎない彼に口元が緩んでしまう。可愛すぎるでしょ。


「…るじ、」
「………。」
「…主!」
「っえ!?な、何…?」
「………。」


今度は私が不意打ちを食らうターンだった。
長谷部の端整な顔が私の目前に近付いてきたのだ。恐らく内心彼の可愛さに悶えて何も話さなくなった私を心配してくれたのだろうけど、心臓に悪い。
驚きのあまり私は返事をする際声が裏返ってしまった。うう、恥ずかしい。
思わず腕を離してしまった隙に長谷部は私の方へ向き直り真っ赤になったであろう私の頬に手が添えた。自動的に目を合うと同時に彼の口元が上がった気がした。


「いつも俺をからかって…審神者様はいけない人だ。」
「は、せべ…」
「貴女も俺と同じくらい赤くなりましたね、可愛らしい。」
「…っ。」
「ね、これから何をすると思いますか?」


そう言って更に距離を縮めてくる彼に抗うことが出来なかった。いや、例え抗おうと思ったとしてもこれから起こる事への期待の方が大きすぎて結局動けないだろう。観念した私は胸の鼓動が相手に伝わらないよう願いながらそっと瞳を閉じた。


いつもと違う君。
(私の知らない貴方をもっと見せて)
20150303



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