ずっと待っていた


※審神者→長谷部
夢主は長谷部を追い求めて三千里状態。
長谷部は喋りません。


「……はぁ〜っ。」
「審神者ちゃん、また溜息。もうこれで6回目だよ。」
「だってー!長谷部さんが来ないんだもん!!光忠、知り合いなら連れてきてよぉ!!」
「えぇっ!?幾ら君の頼みでもそれだけは無理だって。」


審神者として刀剣男士を纏め上げてかれこれ日数は経っている私だけど1つだけ難所の壁にぶつかっていた。さっき交わした光忠との会話でお察しの通り我が本丸にへし切長谷部が来てくれないのだ。
最初はあの気さくな光忠が話が合わないと言うくらいの人物だからどんな刀剣なのだろうと興味本位を持ち彼に話を聞いている内に想いを馳せていた。一刻も早く会ってお話してみたいのにやっぱり物欲センサーとやらが出ていると相手方も反応してしまうのか中々姿を見せてくれない。会えずじまいで渋々本丸へと帰還する毎日を繰り返していた。


「ほら、今日も長谷部くんを探しに行くんでしょ?早く身支度して行こう?」
「……うん。」
「…資材も沢山あるし鍛刀するけどいいかい?それで出陣して帰ってから確認しよう?もしかしたら長谷部くんが来てくれてるかもしれないしね。」
「〜〜っ、光忠!!ありがとう!!」
「これくらい主の為なら当たり前だよ。僕は…いや、僕達は君の笑顔が何より好きなんだから。」


ああ、私はなんて幸せ者なんだろう。
自分ではない刀を求めている主に対してこんな言葉をかけてくれるなんて…恐らく私が光忠の立場なら嫉妬に狩られてしまっている筈だ。こんな私でも傍に付いてくれている光忠や他の刀剣達に後でお礼をしなくてはと思いながら私は支度をしに自室へ足を進めた。


場所は変わって桶狭間。
審神者になり日数が経っているとはいえまだまだ新米に変わりない私は此処に出陣するだけで精一杯だった。もう少し先に行けば会える確率は上がるって聞いたけど第一に皆を傷付けたくないから今は此処で十分だと思っている。


「ふぅっ…。」
「お疲れ様、光忠。皆を纏めてくれてありがとう。」
「まだだよ、審神者ちゃん。この先に今までより強い敵が居るんだから。」
「……そうだね。気を引き締めないと。」
「………。」
「……?どうしたの?」
「大丈夫、必ず長谷部くんを連れて帰るから。」


光忠はそう言葉を残すと私の頭をポンと優しく叩いて一軍の皆の元へ向かった。相変わらず格好良いな、他の女の子ならその言葉と行動でイチコロだよ。長谷部さんに夢中な私でさえ速まる鼓動を抑える事が暫く困難だった。


「格好良く決めたいよね!!」
「やった!!光忠、勝ったよ!!」
「誉も貰えたし嬉しいよ。……さて、本題は此処からだ。」
「……お願い。」


私は両目を瞑り決死の思いで両手を併せた。神様お願いします、どうか長谷部さんを私に…!
鼓膜からは桜吹雪が舞う音が響き渡るが中々瞳を開けることが出来ない。期待と不安で入り交じった心が制御出来ない中ふと肩に手が置かれる。その方向にチラリと視線を向ければ光忠が優しく微笑んでいた。


「おめでとう。」
「……へっ?」
「…ほら、前向いて。自分の目で確かめてみて?」
「……っ!!」
「頑張ったね、お疲れ様。」


視線の先に映るのは菫色の瞳の待ち焦がれた彼が居た。


ようやく会えた。
(やはり貴方は美しかった。)
20150818






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