スタートライン


何でこの男はこうも理想の体型をしているのだろうか。内番用のジャージ姿になると余計厚い胸板や括れたウエスト等に目がいってしまう。
現在本丸には私しか女は居ないが、例えとして他に女の子が居るとして私が同意を求めればきっと首を縦に振るだろう。それくらい光忠のプロポーションは完璧だった。くうっ…乱ちゃんが女の子だったらだったらなぁ、と畑仕事中に女らしからぬ思考を働かせていた。


「…、ちゃん。」
「……。(あの腰に抱き着きたい。)」
「審神者ちゃんってば!!」
「うわぁっ!?」
「…!危ない!」


いきなり大声で名前を呼ばれ私は驚いた。驚いた拍子に昨晩の雨でぬかるんでいた土に足を取られたが、すかさず光忠が腕を引っ張って私を抱き留めてくれた。


「み、光忠…。」
「全く…これだから君から目が離せないんだよね。」
「………。」
「ん?どうしたの?」


あああ、光忠の魅惑の腰が私の目の前に…!え?これ、流れに任せて腕回していいのかな?触りたいけど変な子だと思われたくないし…等私の頭は既に煩悩まみれになっていた。と、取り敢えずいきなり触るのも何だし聞いてみよう…うん、そうしよう。


「あの、光忠…?」
「何だい?今日の君は何となくおかしい気がするんだけど僕の気のせいかな?」
「そ、そんなことないよ!…それよりお願いがあるの。」
「僕に?なんだか嬉しいね。審神者ちゃんからのお願いなら大歓迎さ。」
「その、抱き着いても良いですか…?」


言 っ て し ま っ た !
もう取り返しはつかない、言い訳なんて考えてないし拒否されたら今後の関係もギクシャクするだろう。私は真っ赤な顔を下に向けて相手からの返事を待った。


「うん、良いよ。」
「へ?」
「だから良いって言ってるの。君からの抱擁なんて嬉しくて長谷部くんに自慢したいくらいだよ。」
「そんなことしたら長谷部に斬られるよ。」
「冗談冗談。それくらい僕でも承知さ。」


「おいで。」と言いながら光忠は私の前で腕を大きく広げた。もう、そんな事されたらいつも以上にかっこよく見えるじゃんか。
私は遠慮がちに腕を回すのであった。


念願叶う。
(これが恋の始まりとは気付きもしなかった。)
20150319



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