「はぁ…ナユ…」
チップを入れたジップロックへ何度も唇を押し付けるエンジェル。
「たまらなく俺の心はナユタに鷲掴みにされちまった…はぁ〜…」
うっとりと、それでぶるっと身震いしているエンジェル。
「また震えてやがる…」
身震いしてたの、初めてじゃないのか…。
ザックスも俺も、エンジェルと共にミセスヴィーナスの帰還を待っていた。
まあ、俺とエンジェルの諍いにミセスが仲裁する形になったから、俺とエンジェルがミセスの帰還を待つのは当然だろう。
それに目を離したらエンジェルがなんかやらかしそうで怖かった。
ザックスはなんで残っているかは分からない。
ザックスに関しては正直さっさと自分の仕事に戻っても良かったのだと思うが。
「あの黒くてさらさらの髪に、滑らかな肌。触れるのが待ち遠しいぜ…」
「…。」
なんだかポエマー化してしまったこいつをザックスは気持ち悪いものでも見るような目で見ていた。まさか怖いもの見たさで残ってるのか。
そう考えていたら、2ドアピックアップトラックが帰ってきた。
「ただいまー!みんな!」
「ミセス!」
めちゃくちゃ嬉しそうな顔をしてエンジェルはミセスを出迎えていた。
「ミセス!ナユなんて言ってた!?答えは!?どうだった!?」
前のめりに勢いのまま矢継ぎ早に質問するエンジェル。
「エンジェル、落ち着いて。順番に話すわ。」
矢継ぎ早と言ってもこいつ同じこと言ってるだけだが。
しかしミセスからも順番に話すことがあるらしい。
「一応、エンジェルのことは嫌い?って聞いてみたわ」
「ど、どうだったんだ!?」
「好きとか嫌いというか以前に、いきなり過ぎて恐怖の方が強い、そうよ。」
そんなこと聞いてたのかミセス。…そりゃそうだろうな、怖いだろう。
「…ってことは!俺の事嫌いじゃないってことだな!?」
うん。なんでそんな解釈になる。前向きにも程がある。
「その前に怖いって言ってんだろうが…」
ザックスすら突っ込んでいた。いや本当にそのとおりだ。