輝くオアシスのczar


 ブロロロロロ…
 車の音が近付いて来た。
 ビュイック・リヴィエラか、初代シボレー・カマロか。
 前者なら私の人生は終わる。確実に終わる。
 
 そして、ブレーキ音を立てて車が停まった。
 恐る恐る陰から覗いてみる。
 停まった車は…ビュイック・リヴィエラでも初代シボレー・カマロでもなく。
 2ドアピックアップトラックであった。
「え?誰?」
 素で思った。
 あの悪魔でも、ビックスバイトさんでもないのだ。

「ここにナユタって子がいるのかしらね?」
 その車に乗っていたのは、ピンク髪の恰幅のいい黒人の女性だった。
 なんで私の名前を知っているんだろうかこの人。
「サンバイザーをしていてポニーテールの日本人の女の子…あら!あなたね!」
 私のことを見つけたその黒人女性は笑顔を向けて話しかけてきた。え?何なんだ!?私の全く知らん人だぞ!
「あなたがナユタよね?お届け物があるのよー!」
 そう言って車から降りると、トランクからスーツケースを取り出してきた。
 ピンク色のスーツケース。私のだ!
「えっ、あっ、えっ!私の!」
「そうよ!これ、あなたのでしょ!」
 なぜビックスバイトさんに頼んだ荷物を彼女が運んできたのだろうか。
「あ、ありがとうございます!
す、すみませんがなぜ…あなたが?」
「ああ、ちょっとエンジェルとビックスバイトが一悶着になっちゃってね!それなら私が運ぶわ!と名乗り出たのよ。」
 やっぱりか…!この人がいる状況で良かった。
 頼んでおいて悪いが、ビックスバイトさんのあの憂鬱そうな様子を見るに、暴走してるあの悪魔に勝てるかどうか分からない。
 ごめんよビックスバイトさん…無駄な徒労をかけてしまった…。
 あ!ビックスバイトさんが戻ってこなかったってことはチップ渡せないじゃん!
 やばい。後で渡さないといけないな…。
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