会えぬ互いとタロットカード


「トロッテのばーちゃん!俺を占ってくれ!!」
「…いきなりなんだい。」
 一昨日からずっと探しているのにも関わらず。俺の愛しいナユタが見つからない!
 これはおかしい!だって俺に告白されて嫌だって女いたことねぇのに!
「…エンジェル。いつもは客として私を乗せるあんたが、珍しく今回は私の客かい。」
 トロッテばーちゃんは偏屈なばーちゃんなふりして、クレイジータクシーによく乗ってる意外とファンキーなばーちゃんだ。
「グリッターオアシス一の占い師のあんたに教えて欲しいんだ!」
「…ま、言いたいことは分かるよ。ナユタって日本人の女を探してるんだろう。」
「な、何でわかったんだ…!?まさかばーちゃん、占いで分かったのか!?」
 やべーなばーちゃん。流石グリッターオアシス一の占い師だな!
「何言ってんだい。あんた昼にスペースチャンネル5の生中継に出てただろ。その時にその女を探してると高らかに言ってたじゃないか。」
「見てたのかばーちゃん!」
 そうだ俺テレビに出たんだった!それでナユタに向かって愛のメッセージを送ったんだった!
「なぁばーちゃん、ナユタのいる場所分かる?」
「…うーん」
 トロッテばーちゃんは考え込んだ。そして言う。
「それをまず占ってみるかい?」
「おう!頼む!」
「…それなら。あんた、その随分大事に小袋に入れてる金。」
「ん?なんだ?これか?ナユタがくれたチップなんだ!見てくれよ!」
「…それを駄賃としてもらおうか。」
「What!?」
 ばーちゃんはとんでもないことを言い出した。冗談じゃねぇ!!これはナユタがくれたチップなんだぞ!!
「ばーちゃん!他の金なら倍で弾むぜ!このチップだけはだめだ!!」
「あんたがどれほどの覚悟なのかを見たいんだ。どうだい。やるかい。」 
「…マジかよ。」
 ばーちゃんは真剣な目つきで俺を見てくる。
 …ここで差し出さなかったら、俺の運命どうなっちまうんだ?
「…ばーちゃん。分かった。このチップをやる。」
「そうかい。」
「後生大事にしてくれよ!?ナユタから直接渡された大事なチップなんだよ!!」
「あんたねぇ…。まあ良いよ。受け取った。」
 ナユタのチップを受け取ったトロッテばーちゃんはタロットカードをさっさと切り始めた。
「ばーちゃん!その代わり絶対絶対当ててくれよ!?」
「圧が強い圧が強い。…あの子の視点で、ツーオラクルで占ってみようか。」
「ツーオラクル?なにそれ?」
「2枚引いて、それが意味する事柄を読み解くんさ。」
 ばーちゃんがカードを抜いて、十字に並べた。そして、カードをめくった。
「……エンジェル。あんたナユタに告白したのかい?」
「おう!一昨日な!」
「…そうかい。…これは……。」
 トロッテばーちゃんはまた考え込んだ。そして言う。
「下の縦のカード。これは原因を意味するんだが…悪魔の正位置だね」
「おう。」
 ばーちゃんの言う通り、悪魔が描かれたカードが出てきた。
「ふむ…なんか事情があってグリッターオアシスに来てみたら…その子、めちゃくちゃあんたにビビったみたいだよ。」
「は!?」
 え!?ナユタが俺にビビったって…どーゆーことだ!
「あんたどう告白したんだい。」
「決まってんだろ!?即惚れたって言ったんだ!それで結婚しようって言った!」
「…その子アメリカに来たばかりなんだろう。見知らぬ土地でいきなり結婚してくれとか違う人種の人間に言われたらビビるよ。」
「え……。」
 そんな。嘘だろ…?
「ばーちゃん…それも占いで出たのか!?」
「あんたは占いと論理的に導き出した結論の違いも分からんのかい。」
「そーなのか!?よく分かんねぇ!」
「…続き行くよ。さて、上の横にしてあるカードだが…これは対策の意味だ。」
 ばーちゃんが横のカードをひっくり返した。なんだか陰気そうな老人の描かれたカードだった。
「…隠者の正位置か。」
「なんかよくわかんねぇが、良いカードなのか?」
「…あんたから隠れて色々何とかしようとしてるね。」
「なんだと!?」
「これはどういうことだろうねぇ…まあ灯台下暗しって意味があるんだが、案外近くにいるけど見つけられないようにしてるのかもねぇ」
 トロッテばーちゃんが問うてくる。俺は考えた。ナユタは俺から逃げようとしてんのか? いや、待てよ?
「もしかして…俺にビビって色々してるって、俺のことを考えてくれてるのか…!?」
「…あんたの中じゃそうなるのかい?」
 それはつまり!俺を意識してくれているということだな!なんて可愛いんだ!ばーちゃんが引いた顔をしてるが気にしない。
「ナユタは俺を意識してくれているのか…!」
「まあ、色んな意味で言うならそうだろうけどね…。」
「それなら!ナユタを見つけ出してプロポーズすれば良いんだな!しかも灯台下暗しってことは案外俺の近くにいるってことだろ!?全く照れ屋さんだな俺の愛しのナユタは!」
「…あんたのその前向きさはある意味尊敬するよ。」
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