会えぬ互いとタロットカード


 あー、怖かった。
 あいつ、やっぱストーカーしてやがる…。
 でもなんで私の部屋に襲撃して来ないんだろうか。
 …いや、されても困るんだが。
 一部屋一部屋探されても迷惑だし。
 そんなことを考えていたら、ガレージに到着する。
 シャッターを開け、車とともに入る。
「さーて、替えないとね」
 車はオイルが命。替えてあげなければ車全体がパーだ!
 売りに出されていた中古車だけど、オイル交換とかきちんと整備してくれているかは店舗によるらしい。
 …んで、アメリカは日本ほど丁寧じゃないしね。偏見だけど日本ほど何事も丁寧な国なんてないだろう。
 ボンネットを開けて、中のオイルをオイルレベルゲージで確認する。
「あちゃー、黒いね」
 やっぱり新しくオイルを買って正解だった。
 まあ整備はあの良い人なディーラーさんの担当さんじゃないだろうしねぇ。
 ボンネットを開けるついでに、タイミングベルトも確認。…これは替えてあった。良かった。
 ここから更にクレイジータクシー仕様にする。
 テンションを上げるために、私はスマホからとあるラジオアプリをいじくった。
「…繋がるかな〜」
 聞きたい局は、日本の海賊放送。普通は正規の方法で聴くことはできないが…GGのコーンが作ってくれたアプリで探してみる。「コレで海外でも聴けるぞイナカモノ!天才の俺に感謝を!」とか言っていた。イナカモノはやめろ!
 なんかコーンの趣味なのか、アプリだと言うのにチューニングするらしいダイヤルが画面に出る。画面のダイヤルを回すと…ザザザっという音と独特のチューニング音…その中で回すのを続けると…
『…ジェットセットラジオォォォォォーーー!!』
「お、来た!」
 きたきたきたきた!ジェットセットラジオ!
『聞こえているか俺の声!アンテナの感度はビンビンか?』
 このDJプロフェッサーKの毒舌ラップが最高に良い。テンション上がるわ!
 この人のイカれたDJプレイは聞いてるだけで楽しくなる。やっぱヒップホップは最高だ。
『ここでE田くんからのお便りを紹介。「拝啓、ジェットセットラジオ様」』
「うんうん」
『「最近ゴミが我が部屋に散乱してゴミ屋敷と化しております。どうすれば良いですか?」』
 お便りのチョイスおかしいだろ!?てかラジオに送る内容か!?
『部屋ごと燃やせば良いのさ!』
 いや良くねーよプロフェッサーK!!
 この人確か前ゴキブリ退治にも家燃やせって言ってた気がするわ。
『最近のシブヤは駅周りビルばっかでなんだお前ら、人ばっかで人の置く場所がないとか言ってたのはどこのどいつだ?人は無理でもビルはありって随分なトンチ利かせてるつもりか?まあ駆け回ってるルーディーズのお前らには関係ねーか!
さーてお前らお楽しみの曲の時間だ!』
 そうして流れる曲は、日本でもよく聞いていたあの曲だ。
「…カエルガナイチャウヨー…」
 多分絶対そうは言ってないけどそういう風に聞こえるんだ。
「…さーて」
 私は持ってきておいたつなぎへと着替えた。…服を汚すのは嫌だし。そして髪はポニーテールへと戻して、整備用の手袋をはめた。
 ラジオの曲をBGMに。車のオイル交換開始だ。

 車をジャッキアップし、アンダーカバーも外して、トレーを用意。下のドレンボルトを開けると、ドバっと出てくる黒いオイル。
 …そーいやあの中古車店、オイルの引き取りやってるって書いてあったなー。不要なオイルは缶に入れて、あそこに持ってくか。
 ミッションオイルとデフオイルも排出しておく。
 …そんでもって…新品のオイルフィルター!じゃじゃーん!
 あの動画ではまだやってなかったオイルフィルターを取り付けようと思う!
 …自分で考えていてじゃじゃーん!って痛いな。
 古い方のオイルフィルターを少し回すと、ドバーっとオイルが垂れてくる。勿論こちらもすかさずトレーを下に置く。
 オイルフィルターを外すと、更にドバーっと出る。
 オイルが完全に出終わったのを確認し…オイルを拭いて。
 新しいフィルターをセットし回した。
 …やばい。めっちゃワクワクするなぁ。
 早くクレイジータクシーデビューしたいなぁ。
 でもまだだ。油を変えるだけではだめ。パーツを色々改造しなくてはならない。
 どう考えてもクレイジータクシーの車は改造車だもんねぇ。
 …一歩間違えればフェアレディをポンコツにしかねない。慎重にやらないとね…。ホップ用のハイドロだってやらなくてはいけない。
 あ、それに車を黄色くしないとだ。スプレーにするかハケで塗るか…。スプレーの方が慣れてるからスプレーかなぁ。どう塗ろうかなぁ。フェアレディの白い部分を残してツートンにしようか。それでチェッカー貼るかなぁ〜。
 排出用のボルトを締めて、ミッションとデフのオイルを補充。
 アンダーカバーを取り付けて、ジャッキアップを外して。
 そしてエンジンオイルを補充した。
「…うん、ぴったり!」
 オイルレベルゲージはぴったり中間だ。
 色々やっていたら、もうこんな時間。パーツ選びは明日にしよう。
 暖機運転を兼ねて食料買いに行くか。
 私は髪型を変えてつなぎを脱ぎ、パーカーを着込んでフェアレディに乗り込んだ。
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