準備を進めよう


『まあ、こいつらは大丈夫だぜ!ここいらでは!…ん?これ、もしかしたらテレビか?』
『あ、はい。スペースチャンネル5です。』
『おいマジかよ!いいタイミングじゃん!お〜い!』
『ちょ、ちょっと!?』
 奴がカメラを掴んだらしく、突然エンジェルがドアップになった!うわあああ!!
「あ、エンジェルよ!」
「きゃー!」
 ヴィジョンを観ているらしい女性達から黄色い声が上がる。
『My dear!!観てくれてるか愛しのナユター!!』
 ぎゃー!名指しすんじゃねぇ!!
『全く!昨日街中をタクシーしながら探したのに、見かけなかったぜ?俺を焦らしてるんだろ?イケない子だぜ♡』
 うるさいな!焦らしてねーよ!会いたくないんだよ!!
『テレビなんだろ?人探しだってやってくれるよな?』
『いや今日はモロ星人の侵攻を確認しにきたので人探しはしていないんですが』
『ナユタはな、世界で…いや宇宙で唯一人の俺の運命の人なんだ!』
『そ、そうなんですか』
 聞いてねーなこいつ。会話しても無駄だぞ。
『あれは一昨日、俺が昼間に仕事行った時だった…出会っちまったんだよ!笑顔の素敵な日本人に!ナユタって言うんだ!』
 …私のプライバシーなんてないのか…。誰か止めてくれ…。
『その日から俺はずっとナユタのことで頭がいっぱいなんだぜ!あっちは嫌だ!って言って逃げちまったんだけど!』
『は、はあ……』
『だからずっとグリッターオアシス中を探し回ってるんだ!ここの元締からは強引なのはやめろって言われてるけど、俺の愛は止まらないぜ!』
『か、彼女の意思はどこにあるんですか?』
『俺が好きなんだ!彼女だって俺を好きになるに決まってる!』
 ふざけんな!だからあんたのその自信はどっから来てんの!?
『うわ…勘違いストーカーの匂いがぎゅんぎゅんします!』
 うらら、よく言った。いいぞ!もっと言ってやれ!
『ストーカーじゃねぇよ!これは愛だって!てな訳でナユタ、俺はいつでもお前の愛を受け止める準備ができてるぜ!』
 …いや待て!なんで私がお前を好きな前提なんだよ!!
『多分、そう思ってるのは彼だけです!』
 全くその通りだうららさんよ。
『よし!今日こそはナユタを見つけ出してみせるぜ!愛してるぜMy dear!Ummmmuah!!』
「ヒイィィィィィィ!!」
 エンジェルが投げキッスを飛ばしてきた!もうやだよ!!
「きゃー!エンジェルぅぅぅぅ!」
 周りから黄色い声が聞こえてくる。
『よし!俺はもう行くぜ!ありがとうなスペースチャンネル5!』
 そう言い残し、ビュイック・リヴィエラに乗り去って行くエンジェル。
 もう勘弁してくれ…私の心臓がバクバクしている!恐怖でな!
『…え、えー、グリッターオアシスは勘違いストーカーな彼のお陰で平和が保たれているようです。現場からは以上です。うららでした。』
「…ったく、あの馬鹿は相変わらずテレビに映っても馬鹿か。」
「!?」
 後ろを振り向くと、巨体で金髪の人が5代目キャデラック・ドゥビルに体を預けて給油していた。
 こ、こんな間近に最後の人が!あ、やばい挨拶したい。したいけどエンジェルに情報漏れたらヤバい。
「あ、ザックス!」
「ああ?」
「ちょうど良かった!シティレストランまで乗せてってくれよ!」
「ちっ…今給油中だぞ」
 怖!舌打ちした!怖!この人ザックスっていうのか、覚えておこう…。
「勿論給油終わるまで待つよ!」
「ふん、じゃあ待ってろ」
 …お客さんはザックスさんの性格が分かってるようだ…。舌打ちされたにも関わらず慣れた対応だ。
 …私が上手く対応できるとは思えない。挨拶はちゃんと準備してからにしよう…。
 それにエンジェルが私を隅々まで探し回っているという恐ろしい情報を得てしまったのだ。私は命が惜しいぞ!見つかったら終わりだ!
「…お前」
「…え?」
 しまったザックスさんをずっと見ながら考え事していた!
「さっきから何俺の事見てるんだ…?」
「!」
「お、おいザックス、そろそろ給油終わったんじゃねぇか!?」
「し、失礼しましたっ!」
 お客さん、ザックスさんの性格を分かっているのか気を反らそうとしてくれた!ありがとうお客さん!!
 私は車に飛び乗ってガレージへと急いだ。

「…。あいつアジア人だったよな…」
「ああそうだな」
「まさか…いや、まあ俺には関係ねぇか」
「あー、例のエンジェルが追ってる日本人?まあぱっと見日本人か何人かなんて案外分からんよなぁ」
「…くだらねぇこと話してねぇでさっさと乗れ」
「お、おう、頼むぜ!」
5/5 prev list next
「#オメガバース」のBL小説を読む
BL小説 BLove
×
- ナノ -