準備を進めよう


『エンジンオイル見るついでにタイミングベルトも見るか。良いな?』
『別に良いぜ。』
 タイミングベルトはエンジンの動力部分を繋ぐ部分だ。これもこれで重要な所だ。
 外されるカバー。キレイなタイミングベルトが装着されていた。
『…タイミングベルトは劣化してなさそうだな。』
『流石にな!これは最近替えたばっかだぜ!』
『だから偉そうにしてんじゃねぇ』
『なんでタイミングベルトは替えたのにオイルは替えてないのさ〜』
『なんとなくだよなんとなく』
『最近はタイミングベルトのない車種も出てきたらしいがな…。まあ、クラシックカーにそんな話は無縁だ。
…アクセル、デフとミッションのオイルはそれぞれいつ替えた?』
『…えー、いきなり聞く?最近だよ最近』
『タイミングベルトとは違って全然自信なさげだね〜、なんで顔反らしてるんだい』
『エンジンに詳しくないドライバーが雑に扱うと、デフやミッションはすぐ壊れるからな。お前は勉強し直しだアクセル!』
『……厳しいなー、ちくしょー……』
 …凄いな、エンジン以外のオイル交換のやり方まで解説してくれるなんて…!ありがたい!ぶっちゃけ日本でやってた時代は、仕事用のは整備士さんがやってくれたり買い替えとか普通にしてたからあんまりそこはやれてなかったのだ。
 個人ではたまーにやったことがある。父親がよくやっているのを小さい頃見ていた。…が18歳から免許を取ってたった2年。エンジンオイルはよく替えていたが、それ以外に関しては上手いやり方なのかは未だわかってなかったりする。見て技術を盗めとは難しいものだ…。
『オーリーキング、サンフランシスコ大会!スペースチャンネル5独占生放送!!』
 と思ったら急に広告入った!まあ知ってるさ、この手の動画サイトは広告が入るのだ。スペースチャンネル5、よっぽどオーリーキングの放映権ゲットが嬉しいらしい。
 …ん!?この緑色、テツだ!テツ・タナカだ!テツはオーリーキングの中でも活躍できてるらしい。とんでもない面倒くさがりだけど、息災なようで良かった。昔の仲間が活躍してると嬉しいなぁ。
『待ってくれよ、替えの油買ってねーんだぞガス!』
 あ、動画が再開した。
『なら今からでも買いに行っちゃう?」
『B.D.ジョー、良い提案だ。…暖機運転兼ねて、お前の車で行くか、アクセル?オイルを替えるには必要だからな?』
『マジかよー』
『普通の安全運転で良いからな!クレイジータクシーして壊されたら元も子もねぇ!』
 その後、超早送りで買い物光景をさらっと描いた後本編に戻った。良い編集だ。
『さて、帰ってきたぞ。さあオイル替えだ。
さて、ジャッキアップしてオイルを抜くか。ジャッキアップするぞー』
『丁重に扱えよ〜…』
『お前が丁重に扱え』
 そうガスさんがやり取りしている内に、ジャッキアップされるキャデラック・エルドラド。エルドラドの裏側が見えてきた。
『アンダーカバー、外すからな。てかお前もやれ』
『へーい』
 アクセルさんとガスさんがアンダーカバーのネジを外す。すると、裏側のパーツ部分が露出する。
『エンジンオイルを抜くぞ。トレーを用意してこのドレンボルトを外すと…』
 そう言うと、用意したトレーへ真っ黒いオイルが出てきた。随分使い込んだオイルだ。
『俺、トレー忘れてそのままドバっと出したことあるわ』
 うわ、あるあるだ。私もトレー用意する前に開けて大変なことになったことがある。
『環境汚染すんなよ。…さて、出し終えたな。ちゃんと廃油のボルトを拭いて締めてっと…まあ、次はオイルフィルターも替えたい所だな。ぜってーやってねぇだろアクセル。』
 あんなにオイルが黒かったら、確かにオイルフィルターも交換しといた方が良さそうだ。
『耳がいてぇ。』
『全く…ジャッキアップしてるし、このままミッションやデフのオイルを見るぞ。
…ミッションオイルはギア替える時に重大だからな。特にギアチェンジはクレイジーダッシュする時に大事なんだ。これも頻繁に替える必要があるぞ。』
 ああそうだ、クレイジータクシーに必要なスキル、クレイジーダッシュ。どういう原理だか分からないが、ギアを替えるとできるらしい。
『さて、廃油側にトレーを用意して…と』
 そう言うと、ガスさんは廃油側のボルトを外した。ドバーッと出るミッションオイル。
『出切ったことを確認したら、廃油側ボルトを締めて、給油側にオイルを入れる。ちゃんと拭いとけよ』
 注がれるミッションオイル。
『んで馴染ませるために10分置いて…給油側ボトルを締めて、油漏れがないか確認してから試運転だな。もっとも、今回は全オイル替えてからで良いと思うが。』
 この流れだと、エンジンオイルが最後かなー。
『…次はデフオイルだな。デフオイルはディファレンシャルギアの保護のためのオイルだが…そもそもディファレンシャルギアたぁ、車が曲線上をカーブする時の、内側と外側のタイヤの回転速度の差を吸収してカーブを走行しやすくしてくれるギアだ。まあ通常のカーブより俺達はクレイジードリフトが多い訳だが…だがないよりはマシだ。』
『メンテや故障する時は大抵ディファレンシャル周りが多いよねぇ、ガス〜』
『そうだなぁ。ついでにいうと、俺達の場合はディファレンシャルギアよりLSD…リミテッド・スリップ・デフの方が大事ではあるんだがな。デフの内輪差の抑え過ぎもデメリットがあって、んで俺達はよくドリフトすることになるからな…そっちの点検もいずれは動画にしたい所だ。』
 そう言いながら、テキパキとデフオイルの処理を終えていた。ドバっと出るオイルが気持ち良い。…あれ凄いくっさいんだけどね。
『さて、抜き終わったぞ。次はデフオイルを入れる。おらアクセルやってみろ!』
『へーい』
 アクセルさんが給油口からデフオイルを注いでいく。
『…入れ終わったぞ。それでちゃんと漏れないようにボルトを締めてっと』
『当然だ』
『…ちったあ褒めてくれよ。俺は褒められて伸びるタイプなんだよ!』
『んじゃあ褒められるようなことやるんだな…』
『メンテナンスは基本中の基本よ?』
『HAHA、頑張ろうね〜アクセル!』
『うう…』
『…さて。ジャッキアップから降ろすぞ。』
 ゆっくり降ろされていくエルドラド。
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