準備を進めよう


 翌日。
「おー…いい天気」
 幸先が良い青空。これは良い。

 テレビを付けると、スペースチャンネル5という番組が最初に現れた。
 最近はうららというレポーターがスペースチャンネル5のイチオシなようだ。
 …。ろ、露出狂だ。宇宙ではそんなファッションが流行ってるのか?
 …そんでレポーターってこんな独特の歩き方するのか…?スペースチャンネル5がそういう方針なの…?
 …踊らされてるとかいう事件起きてるけど宇宙は大変だなぁ。モロ星人とやら、地球に来ないでくれ切実に。地球人すら恐ろしい悪魔がいるんだから。うん。
 一旦CMに入った。
『オーリーキング、サンフランシスコ大会!スペースチャンネル5独占生放送!!』
 …おお、オーリーキングだ。ルール無用のスケートボードのレース大会…放映権はスペースチャンネル5が獲得したのか。スケボーで遊んでた頃の知り合いのテツが出ていた筈だ。
 …私は力がなくて断念したが、テツが何度も従姉妹の方を誘っていた。なんなら「俺面倒だからもういっそあんた出てよ」とか言ってたな。変な所で面倒くさがり出すなし。
 私よりスケボーが得意で力もなかなかある従姉妹は怖がって出たがってなかったが…。結局どうするんだろう。トリックの技術だけじゃなく、レースでの順位も競うらしく、それはもう熾烈な争いになるそうだ。
 CMは前回大会の様子かな。色黒のタトゥーだらけの…これまた上半身裸の露出狂だ…な人が映っている。デカい上にスポーツサングラスで表情が分からない。怖い。あとなんだろう、パンツの横の謎のベルトなんですか。サスペンダーすか。
 しかもその人容赦なく他の参加者を蹴散らしていた。怖!
 あんな図体が吹っ飛ばしてくるとか怖すぎる!!エンジェルとは別ベクトルで怖い!
 …従姉妹はやっぱり怖くて断念するかもしれない…。あんな人に襲われたら一生モノのトラウマだろう。

 テレビを消して、ルームウェア(という名の高校時代のジャージ)のまま軽くパンをかじりながら、Wi-Fiを確認する。ちゃんとWi-Fi付きの物件で良かった。
 スマホでとある動画サイトのアプリを開き、とあるチャンネルへアクセスする。
『…ガスのクレイジーチャンネルだ。』
 クレイジータクシーの動画チャンネルだ。配信しているこの人はなんとあのクレイジータクシー発祥の聖地・ウェストコーストで正真正銘クレイジータクシーを最初に始めたレジェンドなんだそうだ…!
 ウェストコーストに行ったら是非お会いしたい!!拝んでしまいそうだ…!…これまた露出狂だが。
『まあ、クレイジータクシーにやるに辺り今回は整備の話…主にオイル周りだ。』
 車の整備自体は日本にいた時代もよくやっていたので基本は分かっているつもりだ。それでもアメリカでのやり方は随分違う可能性も高い。ここはガスさんの言う通りにした方が良いだろう。
『まずはエンジンオイルの確認だ。
まあ、中古だし買ったばかりの時はすぐ替えるといい。
エンジンオイルは…まあ、車種にもよるし、人によって感覚は違うが、俺的には5000kmで交換するのがオススメだ。』
 あー確かに。カースタント時代はほんと頻繁に替えたなぁ。その辺はクレイジータクシーも同じなのね。
『そうなの?私はかわいい妹が3000km走ったらすぐ替えちゃうわね。』
 あ、ジーナさんだ。この動画によく出てくるこれまたセクシーなお姉さんだ。
『まあジーナも言う通りだが、クレイジータクシーする車は頻繁にオイルを交換しておけ。
…正直めちゃくちゃな運転する以上、通常の車よりオイルの劣化が早くなるからな。クレイジータクシーを速く、そして長く楽しみたいなら…オイル交換はマメにやれ。』
『やべ、俺15000kmは超えてるかも』
『アクセル、お前死にてぇのか!エンジンブローするぞ!』
 おお、アクセルさんもいるらしい。たしか緑髪の人だ。んでアロハシャツを着た…露出狂だ…。
『アクセルみたいに死にたくなければ、オイルはケチケチしないで頻繁に替えることだ。あと、このぐらいの年代の奴だと…化学系よりは鉱物系が良いな。酸化が早いのが難点だが、だが相性ってのはあるからな。』
『へへっ、情報有り難ぇ』
『動画撮り終わったらお前の整備すんぞアクセル!!』
 …仲良いんだな。この2人。
『オイル交換する時はドレンボルトと呼ばれる、エンジンオイルを排出するボルトを外すぞ。下の方にある。…お前のキャデラック・エルドラドでやるか早速』
『俺のかよ!動画の後じゃねぇのか!?恥晒すなよな〜。』
『…今回はアクセルの車でやってるが、ずっと使ってない中古車だと、金属疲労で錆びてるからそのへんのドライバーとか使って無理やり回すなよ?破損するからな?…いっそ、このままお前の車で解説続けるか。
おら、エンジン見せろアクセル』
『ったくしゃーねぇなぁ』
『HAHA、本格的に点検動画になってきたねぇ。』
 あ、B.D.ジョーさんもいるのか。あの黒人のお兄さんだ。
『カメラお前が持ってろよなアクセル』
『へいへい』
『Hey皆、抜き打ち点検始まるよ〜☆』
 キャデラック・エルドラドのボンネットが開けられる。
『まあこれは初歩中の初歩だから知ってる奴はいるだろうが、この棒…オイルレベルゲージをここに差してエンジンオイルの様子を見る。…抜いたぞ。オイル黒いな。流石15000km走ってるだけある。問題なけりゃ透明だ。』
『全く、交換してなかったなんて。』
『悪かったって』
『あとここに量を表す上限のFと下限のLがある。…見事中間だな。』
『へへっ!その点は見事だろ!?』
『なに偉そうにしてんだお前は』
 エンジンオイルは減りも増えもしないのが一番良い。車好きなら当たり前の知識だろうが、初心は何事も忘れずに、だ。
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