「あ、これこれ。これナユタに食ってもらいたかった!」
連れてこられたコーナーに置いてあるのは、ふわふわとしたケーキ。
こ、これは…私の大好きな奴!?
「え、ちょっとシフォンケーキ!?」
やばい超嬉しい。
「勿論食べるよな?」
「勿論よ!」
切り分けて、お皿に乗せる。…ちなみに2ピースだ。食べ過ぎだと思うが仕方あるまい。席に戻って口に入れた。
「あぁ…。美味しいぃ…」
ふわふわのケーキが口の中で溶けてゆく。クリームと一緒に食べると更に幸せだ。
「幸せそうに食べるなぁ」
「だって美味しいんだもん」
「そのケーキ、美味しい?好き?」
「好きよ!」
「そっかぁ…好きかぁ。」
エンジェルはニヤニヤと見てくる。いやなんだよ。
「それさぁ…本当はシフォンケーキとは違うんだぜ?」
「え?」
こんなにふわふわのケーキがシフォンケーキじゃない…だと!?
「エンゼルフードケーキって言うんだよ。」
へー。エンゼルね…ん???エンジェルってことは…。
「いやー、ナユタってば食べ物まで俺のこと好きなんだな♡」
そうだこいつの名前じゃないか!てか何言ってんだこいつ!
「ちょ、ちょっと!馬鹿言わないでエンジェル!」
「エンゼルフードケーキに似てるシフォンケーキが好きってことは、そもそも俺を好きになる要素があったってことだぜ?」
何を言ってるんだこいつは!こじつけてんじゃないよ!
「…もう、馬鹿っ」
ぷいと顔を反らす。
「ははは、可愛いなぁナユは」
ニヤニヤした顔のままエンジェルは私の顔を覗き込んでくる。あーもう調子が狂うなぁ……。
「ああそうだ。俺からもあーんさせて?」
「え」
「はいあーん?」
こいつはエンゼルフードケーキをフォークで刺して差し出してきた。
「ほら?」
…正直恥ずかしいが、ここは腹を括ろう。うん…仕方ないんだ……!
「あ、あーん……」
かぱりと口を開けてケーキを食べると、広がる甘さと美味しさ。
「美味しいだろ?」
「……うん」
多分凄く赤くなってるんだろうなぁ私…。耳が熱いもん…。でも仕方ないじゃない!恥ずかしいんだもの…!さっきから赤面してばかりだ…。
「なー、ナユ」
「何?」
不意に名前を呼ばれて顔をあげるとと、エンジェルは周りに誰もいないのに耳打ちをしてきた。耳に息がかかり、くすりとエンジェルが笑う。
「耳まで赤くなってるぞ?」
「なっ!?」
私は思わず耳を抑えた。…うるさいなっ!もう分かってるよ!なんかもうこいつに遊ばれてる気分…!
「良いなぁその表情…可愛い。」
ニヤニヤと楽しそうにエンジェルは私を見る。もう止めてくれ…!
「今日は好きな子をたまらなく愛でる日だからな。…たっぷり可愛がってやるぜ?ナユ?」
「…ちょっとお!?お部屋に行くとか絶対ダメだからね!?」
「分かってるって♪」
…頼むよ…!そうじゃないと私がもたない…!! ああもうなんかもう今日はこいつに振り回されっぱなしだ…!!
…でも。悪い気はしないと思ってしまっている。そんな私もどうかしてるわ…。
「この後店から出たら…これ以上にあまーい俺の愛をあげるから…覚悟してくれよな?」
「ま、マジっすか…」
「ああマジだ。俺ナユをデロデロのトロトロにしたいっていつも思ってるからな!」
…。いや、ベッドインじゃないだけマシなんだろうけどさ…。
エンジェルはにっこりと笑うが、その笑顔はどうも本気のようである。
「ほら、乗ってくれよ俺の子猫ちゃん」
レストランを出て駐車場。ビュイック・リヴィエラの助手席にエスコートされる。
「…次どこ行くの?」
「ん?そりゃサプライズだからなーいしょ♪じゃあ出発するぜ?」
「う、うん」
発進するビュイック・リヴィエラ。
ホテルを出た車は激しいドライビングで飛んでいく。
…やっぱ刺激的な運転は好き!他人のでも最高!
「あははっ!」
「お、良い笑顔♡」
あ!それが目当てだったかこいつぅ…!
…こいつ、ドライビングテクは本当に良いんだけどな〜。もう。