天使と愛の日


「よし、着いたぞ♪」
 かっ飛ばしてホテルの駐車場にビュイック・リヴィエラを停めると、これまたひょいと私を降ろした。
「それじゃ、手を取るぜ?」
「このままビュッフェじゃなくてホテルの部屋に行くとか言わないでよ…」
「ねーよ!安心してくれよな!」
 言われるまま手を取ると手袋越しにキスをしてきた。
「ちょ、ちょっとお」
「直接してねーから良いだろ?」
「そういう問題!?」
「今日はデートなんだから良いだろ!ほら、行こうぜ!」
 ああもう。調子を狂わせやがってぇ…。
 ホテルに入るとお洒落な内装に感嘆の息が漏れた。うぅん…やっぱり素敵だなぁ…!
 …。いや待て…。こいつホテルでも上半身裸かよ…。ドレスコードとか大丈夫なのかな!?
「よし、こっちおいでMy dear!」
「え!?あ、ちょ!?」
 そのままグイグイとレストランへと連れていかれた。ああもう、あれよあれよと!…そのまんま裸でこいつ行ってるからまあこのホテル裸は大丈夫なんだろうな…うん…。
 席に座ってもエンジェルは私から目を離さなかった。じーっとその青い瞳でギラギラと見てくるから若干やりにくい。
「な、なに?」
「いやナユタ超綺麗だからさ……見とれてたんだよ」
「き、綺麗って…!?そ、そういうことサラッと言うのやめてくれない!?」
「思ったこと言っただけだぜ?」
 ああもう調子狂わせやがって!!ほんとクレイジーガイめ!というか改めて見るとほんとコイツ顔良いな…。裸なのが気になるが。
「と、とりあえず、何か取ってくる」
 頬が熱い感覚がする。そう考えるとあまり見られるのは…恥ずかしい!
 そそくさとビュッフェコーナーへ向かうと、漂うのは甘い香り。
「ふわ…すご…」
 チョコレートのお菓子に……ケーキ?色とりどりのマカロンやジェリービーンズまで!ああもう、どれもこれも美味しそう…!
 しかもびっくりなものもあるのだ。…目の前に拡がるチョコレートの滝。
「これが噂の…!」
 噂のギネスに認定されたチョコレートファウンテン…! もうこれはファウンテン(泉)じゃない!滝だよ滝!!
「チョコレートの滝だぁ……」
「おお、凄いな」
「あ、エンジェル!」
 後ろからひょっこりとエンジェルが現れた。いつの間にかついてきてたようだ。
「こんなに大きいファウンテンなのに、実際食べられないのは残念だわ」
「ナユタなら滝に突っ込んで溺れたいとか言いそうだなー」
「そ、そこまでは思わないわよ!」
「ホントか?」
 エンジェルがにやにや笑いながら聞いてくる。
「わ、私でもそんな馬鹿なことはしませんー」
「ほんとかなー?」
 くっ…相変わらずムカつくなぁ…!私より年下のくせに私を子供扱いしやがって!
「お、あっちに食べられる用のチョコレートファウンテンあるぞ?やってこうぜ♪」
 そうこうしている内にエンジェルがファウンテンで色々チョコがけして貰ってきてしまった。
「ほらよ、ナユタの分だ!」
「わ、ありがと……」
 差し出されたのはチョコがけのマシュマロ。
 1つ手に取ると早速食べてみる。ああもう幸せぇ……。甘いチョコレートの味が口いっぱいに広がっていくー!美味しい!最高!!
「美味えなこれ!!」
 エンジェルも喜んで食べているようだ。うん、やっぱりチョコレートは世界を救う!美味しいもの万歳だっ!(謎)
「…色々他にもあるわね…」
 はなびらのまいチョコタルト、なるものがあった。濃厚チョコタルトの上にバラ状にしたりんごの薄切りが乗せられている…。なんかカ○ゴンになった気分だ。容赦なくお皿に乗せた。
「お、ナユタ。これとかどうだ?」
 エンジェルが指さす先にあったのは…。
「…チュロスだ」
 それも焼きたてで、出来立てでアツアツ!美味しそう……!!しかもこんなにたくさん種類がある!!
「これも食べようよ!!」
 エンジェルも異論はないようで、私が1本取って、席で半分こしながら食べた。うーん美味しい!サクサクしてて甘さ控えめ!
「こっちも食うか?」
 そう言ってエンジェルが差し出してきたのは…バナナチョコレートチュロス…!?焼きたてのそれは外側がパリパリで、アツアツ!ああもうこれも美味しいヤツだ!これは一緒に食べるしかないな、うん。
「これも半分こしよ!」
 そう言って2人で齧り付くと、その熱さとチョコの甘さに思わず頬が緩んだ。
「お、花の奴もあるんだな?」
「はなびらのまいチョコタルトですって。食べる?」
「おう!」
 二人でチョコタルトを分け合う。はなびらにしたりんごの酸味、濃厚なチョコタルト…深く絡み合う絶妙な味だ。美味しいなぁー…!幸せだぁ!!
「よし!またなんか追加してくる!」
「食べるなぁーナユタ。普段はアメリカの1人分量多すぎ!って言ってるのに甘いものは食うよな〜」
「食いしん坊扱いしないでよねー!」
 まあ仕方ない。甘いものは別腹だ。
「それじゃ一緒に行くか♪ナユに食って欲しいものもあるし。…お、ほっぺたにチョコついてるぜ?」
 そう言うとエンジェルはひょいと私の頬についたチョコを舐めとってきた。そしてそのまま、自分の口にも持っていきぺろりと舐め上げる。
「ちょちょちょっとお!?そのままなめちゃうの!?」
「ん?嫌か?」
 嫌というかなんというか…!
 挑発的に目を細めて私を見てくる。その動作から目が離せなかった…。この悪魔め…!!!
 ニヤリと笑いながらエンジェルは見てくるが…そんな色気ダダ漏れな顔で言われたらもう堪らんわっ…!18歳だよなこいつは!?
 私は思いっきり顔を反らしていた。
「そ、そんなに見ないでよ……っ」
「顔赤いぞナユタ?」
 分かってるわ!!だって凄く恥ずかしいもの…。なんでこんなに胸がドキドキしてるのか分からないけど!ああもう、調子狂うなぁ!
「…うぐー…」
 なんか負けた気分なんだけどー!!悔しい…!ああもう!
 …前は「おいおいそんなに照れちまってぇ♡」とかキモいことされてた気がする。最近はやり過ぎないをこいつは覚えた?らしい。
「来いよ?取りに行こーぜ」
 そんな私の思いを余所に、エンジェルは私の手を取る。
「あ、うん…」
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