夢の世界で


 安らぎを覚える水の流れる音で目を覚ます。
「ここは…」
 広がる幻想的な風景。
 星の煌めく、懐かしい光景。
 夢の世界だ。と思う間もなく。声が聞こえた。
「ほっほっほ、誰かと思ったらナユタ、お前さんか!」
「え…」
 まさかこの年になって、再会するとは思わなかった。
 目の前に現れるフクロウ。…厳密にはフクロウの姿をした“夢の世界の住民”、オウルだった。
「オウル、…なんか久しぶりね」
「ほっほっほ!そうじゃ、ナイツもちょうど来ておるんじゃ」
「え?ナイツも?」
 オウルと話していると、響き渡る笛の音。
 その音の元に目を向けると…紫の道化師のような姿。
 見えない笛でナイツが曲を奏でていた。
「ナイツー!」
「…ナユタ?ナユタか?」
 ぶんぶんとナイツに向かって手を振る。こちらに気付くと、手を挙げて合図をして、そしてこちらに降りてきた。飛べるの羨ましい、やっぱり。
「ナイツも久しぶりだね」
「ああ、そうだな!ほんと久しぶりだ」
 笑いながら言うナイツ。
「元気だった?」
「まーな、ナユタは?」
「いやそれがさ…すっごい疲れた…」
「え?なんでだよ」
 もうナイツには色々ぶちまけよう。あれはものすごい恐怖体験だったんだから。
「うん、実はね……
 私、ついにアメリカに来たのよ!こっから!ついに私の夢の!クレイジータクシーライフが始まるわっ!って時にさ…」
「お前それが夢だって言ってたもんな」
「そう!でも同僚になりそうな奴がとんでもない奴だったのよ!!
 出会った瞬間、惚れただかなんだか抜かしてきて!いきなり結婚するぞ!みたいに言ってきたのよ!」
「マジかよ!?ナユタと結婚したいなんて勇気のある奴がいるのか!?」
「それどういう意味!?
 …まあともかく…そいつにタクシーで式場に誘拐されそうになって、なんとか逃げおおせようとしたけどあっちはめちゃくちゃ私に会いたがってて…!
 もうつっっっかれたのよ!リアラ以上にあいつが赤い悪魔よ!!」
 今まであったことを話しきるとナイツはゲラゲラ笑いながら言った。
「あはは!そりゃあ大変だったなぁお前!てかリアラよりヤバイ奴なんているのかよ!」
「笑い事じゃないわよ!…はー、でも疲れた…」
「ほっほっほ、そうして疲れたからナイトピアにやってきてしまったのかのー」
「まあ……ね。もうグリッターオアシスじゃなくて他の所に行きたくてしょうがない……」
「…まあ分かるけどな、オレもその気持ちは」
 オウルが一瞬ナイツを心配するような目を向けていたような気がする。
 彼らなりの悩みもあるのだろう。
 私には分からないが。
「まー、元気出せよナユタ。お前なら楽しいクレイジーライフが送れるって!」
「あんたにだけは言われたくないけどね…」
 ナイツもなかなかクレイジーな時があるのよね…ナイツの能天気さに思わずツッコミを入れてしまった。
 そうこうしている内に、輝く扉が現れた。
「ホホー、扉が現れたのぉ…相変わらずイデアは失くしておらんようじゃの、ナユタ」
 夢の世界は、イデアと呼ばれる光に人間の楽しいという意識が投影されることで作り出されてるらしい。
「お、良いじゃん!こりゃ楽しみだ!」
「あんたって本当にナイトピア好きよねー、ナイツ。まあさ…折角夢の世界に久々に来たし…目覚めるまで遊んでこうかなぁー」
「オレで良ければ付き合うぜ!」
「うん、よろしくね!」
 ……こうして私はナイツと一緒にこの夢の世界でしばらく遊ぶことにしたのだった。
 ドリームゲートにある扉を一つ開けた。
 その先はだだっ広い夜闇の空間。でもこの落ちた先に夢の世界があるのだ…。
 ひょいっと飛び降りる。
 浮遊感を感じながら、落ちていく。
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