聖夜にまつわるエトセトラ


「おーいステファンソン、ヴィクター」
 私を連れながらエンジェルが友人達の元へと行く。
「おおエンジェル、…うん、相変わらずナユタにべったりだな」
「そういうステファンソンは相変わらずVRにべったりじゃん」
「当たり前だろ。これなかったら死んでるも同然だし」
「ヴィクターは?」
「……別に」
 相変わらずステファンソンはVRに首ったけらしい。まあ現実なんてクソ喰らえ!って思ってる人もいるしな…。
「俺はリアルの方が良いぜ、だってリアルには愛しのナユがいるからな♡」
「ちょ…っ」
「おいエンジェル、人前だぞ」
「なんだよ〜お前らには散々俺とナユタの仲を見せびらかしてるからいーじゃねーか!」
「ま、まあ良いけどさ…」
 ま、また人前でそんなこと言って!!てかなんで人前でもそんなオープンなんだよ!!
「そんなことよりこれ!食ったか!?ナユタが作ったニクジャガって日本料理だぜ!」
「ああ食べた!美味しかったな」
「凄い美味かった!ミセスの旦那の腕にも負けてなかったよ!」
「そりゃすげぇよ、ミセスの旦那すげー美味いのに」
 いや本当に凄いわ…。日本ではよく見るクリスマスケーキやチキンはないけど、代わりにあるローストハムやパンプキンのパイやら本当に見事だ。それと比べれば私の料理の腕なんてまだまだだ。
「いやいや、この程度大したことないわ」
 まあそれでも褒めて貰えるのは嬉しいな。
「ふふ、相変わらず謙遜してんな〜」
 そう言ってエンジェルが嬉しそうに笑った。
 …別に謙虚とかじゃなくて実際大したものじゃないからなあ。でもまあ日本料理なんて今時珍しくもないだろうに喜んでもらえて何よりだな!うん!
 …なんて嬉しかったのでほわほわしながら思っていた。
「ねぇねぇ、兄ちゃん達」
「お、どした?」
 ミセスのお子さん…末っ子だっけ。が話しかけてきた。
「今日エンジェル兄ちゃんはナユタ姉ちゃんにプロポーズするの!?」
「え」
 ちょっと待ってこのお子様今なんて言った?
「プロポーズ?」
「……そう!するの!?」
 いやなんでみんな興味津々なの!?当事者だよ私!! エンジェル……流石にここでするのはヤバいでしょ。人の家だし!バカップル認定されるよ!
 ほら、ビックスバイトさんとザックスさんだって呆れた顔してるし…!
 しかしそんな空気も読まずに奴はズバッと言い放ったのだった…!
「そうだな!この聖夜を最高の夜にしてやろうと思う!」
「おい馬鹿エンジェル!!何言ってんの!?受けないわよ!!」
 なんでこの場でプロポーズなんかするの!?馬鹿なの!?
「えー!エンジェル兄ちゃんここでプロポーズするのー!?」
「わー!」
 待って、ミセスの子供たちよ!盛り上がるようなこと言わないで……!
「……エンジェル」
「なんだよ〜みんな期待してるんだから!」
 いやその期待重いからね?何度も言うがここは人の家じゃんか!もうなんなの皆…。
 もう恥ずかしいのかなんか変な気持ちになってきたわ。顔が熱いし胸が苦しいような…!
「…頭が痛い。」
「お前らはここでいちゃつくな!」
 ビックスバイトさんは頭を抱え、ザックスさんはエンジェルに怒鳴っていた。ごもっともだ。こんな所でプロポーズなんて迷惑すぎるでしょ!?ほら、子供たちもざわついてるよ!!
「エンジェル兄ちゃん結婚するのー?」
「だから結婚するのはまだ決まってないってば」
「ナユタ姉ちゃん、もうプロポーズ受けないの?」
「……え?あ、いや……それは……」
思わず言い淀んでしまう。すると子供たちは騒ぎ出した。ああ!もう!恥ずかしい!!
「えーっ!?」
「じゃあプロポーズ受けるのかよ!?」
 もうなんなんだよぉ!子供たちも騒ぎ出さないでえぇぇ!余計に反応しづらすぎるからああぁ! チラッとエンジェルの方を見ると彼は真面目な顔で私を見ていた。…てかなんでさっきから黙っ…て…?
「…え?」
「俺がプロポーズしたら受けてくれるんだよな?」
 …待って。もしかしてこいつ本気にしてる!?いやなんで急に!?ちょっとは空気読んでよ!子供達いるでしょおぉぉぉ!!
「…ふ、ふざけないでよ!何で急にそんな話になるの!」
「おいエンジェル、一応生贄とは言えナユタを困らせるな…」
「良いじゃん別に!」
 ビックスバイトさんがたしなめる。…待て!今この人生贄って言ったな!?
 盛大に頭の中で突っ込んでいたが、エンジェルは唇を尖らせていた。
「証人はいっぱいいる方が良いし!」
「おいおい子供かよ…って」
 エンジェルが私の方に向き直ると私の体を引き寄せた。そして思い切り抱き締めてくる…。
「ちょ、ちょっと!?何すんの!?」
 子供たちが歓声を上げる。
 周りの目も気にせずなんてことをするんだこいつは!!しかもなんか力強くない!?痛いし!!痛いってば!!やめてよもう!皆見てるんだってば!!
「お前が俺と今結婚したくないならそれで良いよ。でもな、俺は諦めねぇぞ!」
「は?」
 そう言うとエンジェルが私の耳元で囁いた。
「お前と家族になりたいんだ」
 …ああ…もう…!何なんだよこいつは本当に…!!ドキッとして嬉しくなってしまう自分が憎い!!悔しいいぃぃ…!!顔に出すな!私!
 出会ってからは暫く恐怖しか感じてなかったのに、こういう感情になってるのムカつく!
「…馬鹿っ」
 そう言うと奴は嬉しそうに笑った。
 そんな私達を見て子供たちが楽しそうに声を上げた。
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