聖夜にまつわるエトセトラ


 イブ当日。
「ナユタ!迎えに来たぜ!」
「うん、あんたなら迎えに来るだろうなぁとは思ってたわよ」
 正直約束してた訳じゃないがエンジェルなら来るだろうとは踏んでいた。
「俺のビュイック・リヴィエラに乗ってくか〜?」
「いや自分の車あるし」
 そう言って私は荷物を積んでいく。
 …いや、別に何か持って来いとは言われてないけど、何か悪いなぁ、と思って一応料理作ってきたんだよな…。
 ちなみに肉じゃがだ。スライスの肉は売ってなかったのでひき肉で作った。日本食代表スシ・テンプラじゃなくて悪いが。
「なんか作ったのか?」
「…一応。」
「ミセスの旦那さんのメシすげーうまいんだぜ〜!でもナユのも楽しみだな!」
 そういやミセス家事できないから旦那さんが専業主夫なんだよなぁとは聞いた。
「アメリカじゃ無名だけど日本食。」
「え!めっちゃ楽しみ!!」
 …そう言ってもらうとなんか嬉しくなる。でも正直には言えない。調子に乗られたらウザいし!
 二人でそれぞれミセスの家まで飛ばす。

 到着した結構でかい一軒家。玄関前には大きなツリーがある。イルミネーションも眩しく光っており、家の前がキラキラしていた。
 アメリカだと派手な家の飾り付けは当たり前だとはよく聞く。
「あら!エンジェル、ナユタ!来てくれたのね!」
「お!ミセス!」
「あ、ミセス。お招き頂きありがとうございます」
 玄関からミセス・ヴィーナスが出迎えてくれた。相変わらずパワフルだなミセス。
「あー、需要あるかは分からないんですけど一応持ち込みをと」
「あ、俺ピザ持ってきたぜ!でも旦那さんのメシ楽しみ!」
「あらあら!ありがとう!じゃあ早速みんなで食べましょう!」
 中に入ってみると、広いな!
 やっぱり7人も子供がいる大所帯だもんな…。
「おーいミセスの旦那〜!」
「やあ!エンジェル、ナユタ!」
 ミセスの旦那さんも出迎えてくれた。エプロン姿だ。
「ん?ナユタどうしたんだい?浮かない顔して」
「あ、いや……私がいていいのかなと……っていうか私の持ち込みなんて需要あるのかな〜と」
「何言ってんだよ〜いつも料理作ってんだから大丈夫だろ」
「そうさ。むしろ僕の料理が口に合うか心配だよ」
 そう旦那さんが言った後、彼は笑って付け加えた。
「それに、久々に友人夫婦が来てくれて嬉しいんだ。だから楽しんでって!」
「…夫婦?」
 誰だ夫婦って。
「エンジェルとナユタはもう夫婦みたいなものだろう?」
「え、ええええ!?」
 思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
 なんでそんなことになってんの!?いつ夫婦になったの私達!
「お、俺プロポーズしたもんなナユタ!」
 エンジェルが便乗して結婚しよ!って何度も言ってきてるけどお断りだコラァ!!
「うふふ、エンジェルったらナユタにぞっこんなんだから」
「俺の子猫ちゃんなんだぜ!」
 エンジェルがどや顔で親指をぐいっと立ててきた。違うからね?
「あら、ナユタもまんざらじゃないんじゃないの?」
「え!?いや…?」
 なんでそういう話になるんだ!そうだ!旦那さんに否定してもらおう!!
「ミセスの旦那さん!こいつの言うことは聞き流していいですから!」
「……ははは。エンジェル、君奥さんに尻に敷かれそうだね」
「むしろ俺はそうしたいしそうされたいんだぜ!」
 エンジェルはそう言って私に抱きついてきた。やめろ!
「もう…バカ!」
「ははは、仲が良さそうでなによりだよ」
 夫婦は否定されなかった!
 でもまあ…ちょっと心配なのは料理。エンジェルは調子の良いこと言ったけど多分私の料理なんて誰も期待しないと思うなあ…。茶色いしな大体日本食。
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