輝くオアシスのczar


「まあ、住み続けていれば慣れてくるわ。あなたもクレイジータクシーのことは知っててこちらに来たんでしょう?」
「は、はい。」
 知識として知ってても、ずっと違う文化圏に住んでた以上はやはりリアルで体感すると違うものがある。
「私、結構衝動的に移住を決めちゃったもので…色々カルチャーショックを受けてますけど、慣れなきゃ。」
 そうだ、クレイジータクシーをやる以上は郷に入ったら郷に従えではないか。戸惑ってもいられない!
「にしてもあなた、そんなに若いのに一人でグリッターオアシス住まいなんて親御さんは心配しなかった?」
「心配どころか父とは喧嘩になりまして…」
 父と喧嘩して、その勢いのまま渡米してしまったのだ。だから日本には帰れない。
「ええ?だ、大丈夫なの?」
「大丈夫です。一人暮らしの算段は…一応ついてますんで!」
 このまま出来るかは分からなくなってしまったが、心配かけてもな。しかも同業者(予定)相手に。
「…まあ、その辺はなんとかしようと思ったらできるんでしょうけど…
まだまだ慣れてない土地で心細い所に、いきなりあんな事されたらそりゃびっくりしちゃうわよね。」
「いやもうびっくりして…!」
 まあ見知らぬ地で心細いと言えば心細い。しかしそれよりも。
「親が云々とか見知らぬ地とかより、エンジェルの事の方が心配ですよ…」
 見知らぬ地云々でなくても、あのエンジェルのぶっ飛び具合はもうびっくりどころではない。見た目もそうだが言動がそれ以上にぶっ飛び過ぎている。そんな人間存在するのかよ!?と色々と衝撃であった。
 あの上半身裸の変態と同僚(予定)として付き合わなきゃいけないとなると憂鬱だ。
「さっきも言った通り、エンジェルは思い込みも激しいけど悪い子じゃないのよ。いきなり恋に落ちちゃったから、とっても舞い上がってしまったんだと思うのよ〜。」
「こここ、恋されるなんて私、初めてでっ」
「…エンジェルのことは嫌い?」
「好きとか嫌いというか以前に、いきなり過ぎて恐怖の方が…!」
 アメリカの映画やドラマを見てても、日本とアメリカの恋愛の進め方って違うんだな〜、とは思ったことはあるが。
 しかしここまでぶっ飛んだアプローチをする奴は初めて見た!多分映画の中だっていない!
「エンジェルがね?あなたに伝言って。」
「はい!?」
「“俺の気持ちはいつでもナユの好きなようにしてくれ”とのことよ。」
「…ええ…。」
 なんだ好きなようにって。全然あいつ私の気持ちお構いなしじゃないか!
「好きなようにってならとりあえずしつこく付き纏わねーで欲しいっす…」
「まあそうよねぇ。エンジェルには、私がきちんと節度を持ってあなたと接するようにきちんと言っておくわ。
それでもダメなら私に言ってちょうだい!」
「良いんですか?」
「勿論エンジェルのこと以外でも何か困ったことがあったらいつでも頼ってちょうだい!自慢じゃないけど私はグリッターオアシスの元締め(czar)みたいなものだからね!」
「元締め?」
「私がグリッターオアシスで最初にクレイジータクシーを始めたの!まあきっかけは夫が仕事をクビにされちゃって、それなら私が稼ぐわ!ってな感じではあるんだけどね」
「え!えええええ!ええ!」
 なんてことだ!!この方がグリッターオアシスの地でクレイジータクシーを始めたレジェンドだとぉ!?
 そんな方にスーツケースを運んできてもらったなんて…この方に足を向けて寝られないじゃないかっ!!
「あ、あああありがとうございます恐れ多いことをっ!!」
「それアッラーへの崇拝かしら?それともジャパニーズ土下座?」
「ジャパニーズ土下座の方ですっ!」
「頭をあげてちょうだい!そんなかしこまらなくていいわ♪」
 頭を上げると笑顔のミセスヴィーナス。
「とりあえずこれは言っておくわ。ようこそグリッターオアシスへ!これから宜しくね!」
「は、はい!」
「それじゃあまたね!」
 2ドアピックアップトラックにミセスは乗り、そしてエンジン音を蒸して去って行った。

 またね、と言ってくれたが…でも!エンジェルには会いたくないんだよな〜………。
 しばらく隠れるか…奴のほとぼりが冷めるまで…。
 あ!?あいつに住所教えちゃったじゃん!?
 やばいよ!襲撃されるかも知れない…!!
 しばらく私は寝れないのか…!?  
 いくらこの地が不夜城とは言え…困った!
 …ホテル暮らしするにも金かかるしな…しかも観光地価格だろうし…。
 どうする?どうする私?ど、どうすれば良いんじゃあ〜〜〜!!
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