輝くオアシスのczar


「あ、ですみません、あなたは…?」
 黄色いオープンの2ドアピックアップトラックを見る限り、彼女もクレイジータクシーのドライバーだ。
「私はヴィーナス!皆は私のことをミセスヴィーナスって呼ぶわ。」
 Mrs、ってことは既婚の方か。
 スーツケースを受け取ると、チップを差し出した。
「何事もチップを出すと聞いてるので…!それに凄く助かりました…!ありがとうございました!」
「こっちのことちゃんと勉強してきてるのね〜!関心するわ♪」
「あ、ありがとうございます…!」
 なんだか感謝し通しだ。
 ミセスヴィーナスの笑顔にはなんだかこちらも安心してきた。
「ミセスもクレイジータクシーをやられてるんです?」
「ええもちろん!」
 女性のドライバーもいるとなったらどこか安心する。
 ついでに全身を覆うレザースーツを着用している。別に露出狂じゃない。良かった。露出狂じゃなくてもクレイジータクシーはできるのか。
「うわぁ…是非次回体感させて頂きたいです…!」
 思いっきり2ドアピックアップトラックに目を輝かせてしまった。
 目の前にクレイジータクシーがある。これだけで興奮するしリスペクトするしかない!状況が状況だけに出来なかったがビックスバイトさんだってリスペクトの対象だ!
「…ふふ、エンジェルが夢中になるのもなんだか分かるわ」
「は!はいっ!?」
 突然のあいつの名前にびっくりした!
「あ、あああいつですかぁ…!!」
 え、なに!?夢中になる!?なんか私したか!?
「大人しそうな子なのかしら?と思ったのだけれど、そんなにキラキラ目を輝かせるんだもの。そりゃエンジェルが好きになりそうね〜!」
「ええ、そんな困りますよ!」
 あいつに好かれるなんて絶対ろくなことはない!ていうか私が振り回される!
「まあ、あんなにぐいぐい来られちゃったらびっくりはするものね?」
 良かった。ここでも流石にそういう感覚はあるようだ。
「いやぁ、びっくりしましたよ…私交際なんて考えたこともないのに、いきなり事を進めてきたから怖かったんですよ!」
「日本人だし、文化の違いもあるわよね?」
「日本じゃあんなぐいぐいくる人なんていなくて…それに私今まで彼氏なんていたこともなかったし!」
「あらあら…そうなの?」
 安心感からか、色々ぶちまけてしまった。
 日本でどつき合う相手ぐらいいたわよ!と堂々と言えれば良かったのだが、刺激的なことを追い求める内に気付いたら20歳を迎えてしまったのだ。
 母や弟からは色々心配されたが、声をかけられたことがない私は多分喪女という奴なのだから仕方ないと思っていた。
「びっくりしちゃったでしょうけど、エンジェルも悪い子じゃないのよ。ちょっと思い込みが激しいけどね」
「そ、そうなんです?」
 ちょっとどころか相当な気がする。悪い奴じゃなくてもあんなグイグイ来られたら嫌だ。
「エンジェルと同い年の息子がいてね〜。ちょっと息子のように思えちゃうの。」
 ああ。流石にミセス、というならお子さんもいるか。
「下の子達もね〜。とってもエンジェルに懐いてるのよ。いつも面倒見てくれて助かってるわ。上3人ぐらいは流石に手がかからなくなってきたけど、やっぱり他4人もいると大変なのよ」
 …面倒見は良い奴なのか。それは意外だな。
 ん?上3人に4人…???
「お子さん7人…?」
「ええそうよ、私息子が7人いるの!」
「ええええ!」
 えっらい子沢山だな!!すげーわ。そのパワーを少子化が進む日本に分けて欲しい。
 …7人の子供を育てられる程金銭的に稼げるってことだろうか、クレイジータクシーは。
 でもこの人は女性だ。子供を妊娠しながらとか抱えながらとかやってたってことか…!?
 まさか赤ん坊もクレイジーなのかここは!?
「ふふふ、7人子供がいるって聞くと、皆びっくりするわね♪」
「さ、流石クレイジータクシーやる方と言いますか、なんというか。」
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