運命とは出逢い


 そう決めた俺は適当な路端にブレーキして停める。
「うわっ!
お、お兄さーん?まだ目的地じゃ…」
「…なあ、あんたここに住むんだろ?」
「…はい?」
「運命に感謝だな!これが旅行だったらきっと俺達遠距離だったんだ!」
 彼女の手袋に包まれた手を一気にホールド。これでときめかない奴はいないぜ!
「俺、エンジェルって言うんだ。名前教えてくれよ?」
「あー…ナユタ」
 ナユタ…そのままも良いけど、ナユって呼ぼう。
 ここに住むなら愛称が良いに決まってる。
「ナユタ!良い名前だな!よろしくな、ナユ!」
「でどうしたの急に車停めて。」
 よくぞ聞いてくれた!
「ナユに惚れた」
 直球勝負。さあ彼女はどう出る?
「…はい?」
 キョトン、とした顔。かわいい。
 けど俺が見たいのはそれじゃない。

 ナユは俺の指を外そうとして来た。
 おいおい、返事がまだじゃん。
 返事を聞かせてくれなきゃ離さないぜー?
 指を外されたら更に絡めてゆく。

「あーお兄さん、口達者ですねぇ」
 あしらってきた。
「俺本気だから」
「いやー私そう言うの慣れてませんでして」
 慣れてない?いや、慣れてないならその反応はない。
 きっと手練だな、彼女!16歳でスゲーな…。
 だがそれはそれで落とし甲斐がある!
「慣れるさ、すぐ」
 ナユ…俺を焦らしてんだろ?参ったな、こりゃお手上げだ。もう俺はナユに首ったけだってのに!
 
 …それじゃあもう目で落とすか。
 俺は思いっきり彼女を見つめた。
 大体の女はこれで落ちる。
 そしたらナユが口を開いた。
「あー…私の気持ちもお構いなしに随分とグイグイ来られますね」
 おいおい。照れてるんだろ?
「俺が好きなんだから、ナユだって俺の事好きになるに決まってる」
 こう言ったらナユがびっくりした顔をしていた。的中しそうだからびっくりしてんだろ!

 あーもう。焦れったい!
 …可愛い唇してるな。
 おっしゃ!必殺「つべこべ言わずキス」だ!
「ひぃっ!あんた何すんのよ!?」
 が、避けられた!
「避けるなよ、キスぐらい良いじゃんナユ」
「良くねーよ!」
「ディープなのは流石にまだしないし良いじゃん!」
 ナユはなかなかの照れ屋らしい。キスに応じてくれない。

 つかんだ手は黒い手袋に包まれている。なんでこれをしてるのか分からねーな。
 スタイル良いんだからもっと肌見せれば良いのになー。
「じゃこっちなら良い?」
「あちょっと!」
 俺はナユの手袋を外した。
 綺麗ですべすべな肌。
 俺は堪らずその手にキスをした。
 Muah!
 唇越しでも分かる肌の滑らかさ。はぁ、たまんねぇ…。
 ナユとのベッドの上を妄想する。こんなすべすべの肌と全身触れ合えるとかなったら確実にそれだけでキてしまいそうだ…。

「…困っている事、言って良い?」
 彼女の声で妄想から引き戻される。
「おう、言ってくれ!」
 何に困ってるんだ?ん?まさか独りじゃ寂しいとかか?
「今まさにあんたに困ってるわよっ!!!」
 …は???

「困ってる!?俺に困る事なんてねーだろナユ!」
「困る事しかないっ!」
 随分と強気な反応をされちまった。
 脈無し?…めっちゃ落とし甲斐がある!
「と、とにかく私こんな事されたら困りますって!」
 だから何が困るんだよ?言ってくれなきゃ分からねぇぞ?

「…エンジェル?」
 他の車が停まったと思ったら、初代シボレー・カマロ。
 ビックスバイトが声をかけてきた。
「…お前何やってるんだ」

 何やってるって、見れば分かるだろ?よし次やること決めた!
「ビックスバイト!今から教会でこの子と式挙げるから」
「…は?」
「…えええええっ!?」
「招待するから来てくれ!」
 俺のサプライズにびっくりしたのかナユが「…馬鹿言うなぁぁぁー!」とか絶叫した。
 照れちゃって。そんなに嬉しいのか♪
「…エンジェル、お前が結婚しようと勝手だが…
相手の子はOKなのか?ここじゃ見ない顔だし」
「全然OKに決まってんじゃん!
だろナユ!」
「全然OKじゃないっ!断るっ!」
「えっ、なんでだ!?善は急げって言うじゃん!」
「全然良い事じゃないっ!」

 そしたらビックスバイトがナユと結婚するのは難しいんじゃないかとか言い出した。 
「色々難しい?何がだよ?」
「まあ…色々、年齢とか、親の許可とか」
「俺っ!立派な18歳だぜ!?許可とかいらねぇしっ!」
「18!?」
「そーだよネバダじゃ結婚できる歳だぜ!」
 そしたらナユは18は無理とか言い出した。
 なんだ?年上は趣味じゃないのか?
「何が無理なんだよ?」
 ビックスバイトはさらにナユの年齢的には大丈夫なのか?と言い出した。
 そうだ!俺としたことが!
 17歳以下は親の許可やら裁判所やらあるもんな!
 おし、こういう時は…
「そーだなー、よし!ナユ!
親御さん呼んで結婚パーティーしようぜ!!」
 Let's partyに決まってんだろ!!
「それで許可貰えれば結婚できる!」
「いや日本なんですけどっ!!」
 日本?ナユは日本人なのか。
 しかしそれよりもびっくりするような発言がナユタから飛び出した。
「なんで私に許可がいるの!?私20歳なんだけど!?」
 
 え…?20歳…!?
 年上なのか!?これで!?
 ナユはびっくりさせてくるな!?
「…16歳ぐらいかと思った。」
 ぶっちゃけ16歳じゃない方が嘘だろ。
 やばいな…ますます俺ナユタにハマっちまいそうだ!

 でもそれで20歳ってことは…よっしゃ許可いらねぇってことじゃん!!
「ナユが20歳なら尚更結婚に問題ねーな!」
 合法的に即結婚できるっ!!!
 そう思って俺はエンジンを動かした。
 そして振り向き、ナユのすべすべの手に再びキスをした。
「…俺はナユが好きだ。年上とか全く気にしねーから。」
 こんなにも俺の気持ちは掴まれちまった。ナユの年齢なんてもう俺には関係ない。
 そして固まっているビックスバイトに声をかけた。
「よしビックスバイト!今から結婚式の準備と婚姻届出してくる!」

「…いやあああああ!!!」
 そうしたら、ナユが絶叫して車から転げ落ちた。
「お、おい、ナユ!どうしたんだよ」
「いやあああお金はあげるから近付かないでぇ!!あ、手袋は返して!」
 嫌とか言いながら俺の手から手袋を奪って、チップを渡してきた。
 絶叫してる癖にチップを渡す余裕があるなんて…本当は俺に追いかけて欲しいんだろ!?
 しかし困ったことにナユは初代シボレー・カマロの後部座席に飛び乗った。
 待てよ!ビックスバイトははえーんだぞ!追いつけねぇ!!

「お、おいっ!?」
「すびばせんどっか飛ばしてっ!!」
「おいビックスバイト!俺のナユをどうする気だ!」
「ど、どうするもあるか…!」
 このまんまビックスバイトの車に乗られるとまずい。
 なんとかしてナユを降ろさないとだな!
「とりあえずエンジェル!あんまりしつこくするな、怯えてるだろ…!」
「え?照れてるんだろ?」
 照れてるからって何も考えずビックスバイトの車に乗るのは頂けないけどな!
「もー早く飛ばしてっ!!」
「はぁ…、とりあえずエンジェル!お前は一旦冷静になれ!」
「あ!おい!」

 俺の抵抗も虚しく、ビックスバイトが一気に飛ばしていってしまった…。
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