ガンッ!!


奈々は、その音に身を縮める。



「女とガキ相手に男3人がかりか…」



上を向くと…

額から血を流した黒鋼が立っていた。小狼を殴り損ねた男達は黒鋼に食って掛かった。



「お前誰だ!部外者は引っ込んでろ!!」

「俺の女とガキに何か用か?」



黒鋼が泣く子も黙る視線で男達を射抜く。男達が後ずさりを始めた。その隙に小狼の側による。特に大きな外傷はないようだった。ゆっくりと小狼の意識が戻る。頭を抑えているが、軽傷だ。奈々は安堵の溜め息をついた。



「そ、そうか分かったぞ!」



「お前ら結婚してるんだな!」



「「「は?」」」

「そうか! 女!結婚してるならしてるって早く言えよな!」

「や、違「くっそー! 覚えてろよー!」



勝手に解釈して勝手に勘違いして勝手に捨てゼリフ残して勝手に帰っていった男達。『覚えてろよー!』なんて悪役の常套捨てゼリフを言わなくてもきっと一生覚えてるだろう。
自分と黒鋼と小狼を夫婦と親子だと間違えられたのは初めてだ。これじゃまるでファイが言っていた家族だ。小さくなっていく影を見つめながら溜め息をついていると黒鋼が怪我をしているという事を思い出した。



「あ! 黒鋼怪我!」

「あ?あぁ…」

「『あぁ』じゃないでしょ!頭の傷はいっぱい血が出るんだから!」



そういってハンカチを黒鋼に額に当てる。ハンカチが血を吸い取って紅に染まっていった。



「…そうだな」



妙にテンションが低い黒鋼に気付いた奈々。

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