「大漁なの♪」「さっすがモコナだよね〜」
金魚すくいから生還した奈々達は、綿飴片手に羽根を捜していた。羽根の波動が出ている場所に行くため、人込みをなるべく避けて進んでいた。
「あれーもしかして1人?」
「かわいそー。俺たちと遊ぶ?」
不意に、後ろから声をかけられる。振り向く暇もなく腕を捕まれ、引っ張られた。
「ちょ… 止めてください!」
「怒っても可愛いねー」
うっわ、これまた典型的なのに捕まった。奈々をからかいながら、尚も引っ張り続ける。奈々は、早速巾着袋からスタンガンを取り出した。だが、それも奪われる。
「わー物騒なもの持ってるね〜」
バチバチっと、それを玩ぶ男。こうなったら蹴り飛ばしてやろうと、浴衣のすそを両手で上げ、足を振りかざした瞬間、腕が離れた。
「し…小狼!」
横から飛び出してきて、男達の手を蹴り飛ばしたのは小狼だった。
「俺の連れになんか用ですか?手を出さないでください」
(小狼それ彼女が襲われたときの決まり文句だから サクラのためにとっとけ!!)
なんて奈々が、こんな緊迫した状況でこんなくだらない事を考えているとは小狼は夢にも思ってないだろう。
「なんだぁ?こいつ」
「この子の彼氏か?」
「ちっちぇな。餓鬼は引っ込んでろ!」
男達が小狼に襲い掛かる。小狼はそれを避けずに腕で受け止めた。そのまま回し蹴りをする。しかし小狼の蹴りにはいつものキレが無い。
奈々の目に間違いはなかった。相手は3人。小狼より背丈が高いとはいえ、いつもなら既に倒しているほどの弱さだ。浴衣と、履き慣れていない下駄のせいでいつもよりスピードが落ちている。それでも、負けているというわけではなかった。
「ちっ梃子摺らせやがって…」
一人の男がスタンガンを取り出す。小狼はスタンガンがどういうものかを知らないから気にせず蹴りを続ける。スタンガン片手に男は背後から小狼に近づく。小狼が振り向いたその瞬間。
バチバチッィッ!
「っ!?」
「小狼!」
バタリ小狼は意識を失ってその場に倒れこんだ。近づこうにも、男達が邪魔をして近づけない。
「へっ… 女のスタンガンが役に立ったな」
「ムカついたからこいつで殴っちまおうぜ」
そういって取り出したのは金属バット。
「やっちまえ!」
バットを大きく振りかぶる。それがそのまま倒れている小狼へと向かって落ちる。
「やぁあぁぁぁ!!」
奈々は思わず目を閉じた。こんなに近くにいたにもかかわらず助けられなかった自分を責めて。小狼を気絶させる原因にもなったスタンガンをいとも容易く奪われた自分を責めて。