―ファイの場合―
「ファイ!助けて!!」
「あ?」
窓の外を見ていたファイが振り返る。
いつもなら『奈々ちゃんどーしたのー?』と聞かれるのだが、今日はそれが無い。でも奈々にはそんな事よりもっと気になる黒鋼のことがあり、それに気付かなかった。
「く、くっくくく黒鋼が!! 黒鋼がヘンなの!!!」
「あの黒いのがか?」
「う、うんっ!! って え?『黒いの』?」
やっとファイの調子がおかしいことに気付いた奈々。嫌な汗が背中を伝う。この予感が的中して欲しくないと願いながらファイに言う。
「あ、えっと 黒鋼がなんかへんだから一緒に来て元に戻す方法考えたいんだけど…」
「めんどくせぇ 何でオレがあんな黒いののためにわざわざ出向いてやらにゃいけねぇんだ」
口調からしても完璧にヘンだが、奈々は他にもおかしいことがあることに気付いた。部屋の片隅においてあるものを指差して奈々は言う。
「ファイ? ヘンな事聞くけどさ、あの蒼氷って黒鋼のものじゃなかったっけ…」
「なにいってんだよ蒼氷と使うのはオレだろ。あいつには魔力があるんだから刀は要らねぇ」
ファイもヘンだし――――!!!
「奈々 どうした?」
「私…今すぐ二人を助けるからね…」
「は?」
そう言い残すと、奈々は部屋を出て、左側の部屋の扉を精一杯の力で叩いた。最初からこっちを頼ればよかったのに!!!ファイや黒鋼よりずっと大人な人がいるじゃん!! そう後悔する奈々。勿論次に頼るのは…
小狼!