雨の次は、晴れ。次の日も、また次の日も晴天。そして、奈々は現れない。そのうち、サクラの羽根が見つかった。
嬉しくなかったわけじゃないが、寂しさのほうがそれを上回った。最後にわがままを1つだけ。あの泉に行くまでの時間を貰った。



――……無駄足かぁ……――



溜息をつく。予想はしていたが、やはり今日も逢えなかった。彼女は今、どこでなにをしているのだろう。そういえば、彼女のことを一切知らないことに気づく。
それがまた、寂しさを募らせた。いつまでもここにいては仕方がない。皆を待たせているんだし、そろそろ帰らなければ迷惑をかけてしまう。ファイは緩慢な動作で方向を変え、ゆっくりと歩き出した。この地が名残惜しいかのように、ゆっくりと。




ポチャン




聞こえた、水の音。まるで呼び止められたようタイミング。思わず、振り返った。
目に飛び込んできたのは、日の光に照らされて美しく輝くあの魚。その色は、奈々の着ていた服と同じ。魚は再び泉に潜り、ファイが見つめる先には、泉と、豊かな自然以外の何もなかった。
もちろん、奈々の姿も。面影も。でも、探した。魚が跳ねた音が、奈々に呼び止められたように聞こえた。気のせいだと分かっているのに。

泉の波紋は、静かに消えていった。

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テーマ「人外ファンタジー」
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