翌日、小狼が言っていてように空は雲ひとつない快晴だった。その空とは裏腹に、ファイの心には暗雲がたちこめていた。

奈々がいなかったのだ。泉に。いくら探してもいない。いつもファイより送れて泉にきたことなどコレまで一度もなかったのに。
昨日の奈々の表情が、脳裏に浮かぶ。切なく揺れ、壊れしまいそうな瞳。泉の水に、溶けて消えていきそうな吐息。奈々を構成する全てが遠く感じられた。同時に、愛おしかった。


今日はたまたまこれなかっただけだと自分に言い聞かせて、ファイは泉を去った。


いつの間にか忘れてしまった習慣。奈々に会う前までは、買い物に行くたびに様子を見に行っていた。

あの魚は、いつもの泉で泳いでいた。ファイはそれを、まだ知らない。

|
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -