「こんにちは ファイさん」



泉に向かったファイを、満面の笑みが出迎えた。もう、この泉に来るのも奈々に会うためになっている。
はじめはあの魚の様子を見るためだったのに。いつの間に、こんなに愛しくなったんだろう。いつの間に、離れたくないと思い始めたんだろう。



「ファイさん……元気ないんですか?」



不安そうな声で問う奈々。奈々に気づかれるほど、自分は元気がないらしい。そんなに拒んでも、拒絶しようとも、羽根が見つかればこの国を発たなければいけないことには変わりないのに。
離れたくないと、想う。奈々にこれ以上悟られないよう、笑顔を作って応えた。



「ううん、元気だよー。あ、明日晴れみたいだし奈々ちゃんなんか食べたいものある?作ってくるよ」

「え……… 明日、晴れなんですか?」



質問の真意が分からなかった。ただ、そのあと見せたどこか寂しそうな、諦めたような表情ははっきりと読み取れた。不安が、憂いが。
まさか的中したなんて。いや、まさか。心の中で精一杯否定する。しかし、雨雲が濃くなっていくが如く、否定すればするほどそれは確証に近くなっていく。

嗚呼、どうか。この不吉な予感が当たらないように。

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