「奈々ちゃーん。いる?」

「ファイさんっ ここです」



ひょこっと岩陰から出てきた影。昨日あった少女。ファイの姿を捉えると、嬉しそうに顔を綻ばせて駆け寄ってきた。
ファイの服の裾を掴み、にっこりと微笑む。なんとなく、『あの魚』のようだなと思った。ファイが近づけば駆け寄ってくるところ。あの魚と同じ色の服。どこか不思議な雰囲気。
そういえば、魚が姿を現さなくなったのと、少女に会ったのは同じ日だった。



「ファイさん?」



奈々の声で、現実世界に引き戻された。まさか、考えすぎだ。


この少女が、魚の化身だなんて。

その日も、魚の姿は見えなかった。

|
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -