もしものおはなし(続々)


「これから和泉ちゃんと一緒にみんなの護衛をすることになりました! 灰音曇です。よろしくね!」
元気な挨拶と共に彼女はイナズマジャパンの一員として護衛をしてくれることになったらしい。
ますます騒がしくなりそうな合宿場に俺は盛大なため息をついた。

俺の名誉と尊厳のために説明するが、決して雪宮の友人──灰音が護衛についてくれるのが嫌なんじゃない。
彼女の参入によって活性化する男子中学生の野郎共が面倒なので、俺は冒頭でため息をついたわけだ。いいか、決して灰音が嫌なんじゃないからな!

「そ・れ・と。」
そんなこと考えてると、灰音がこちらをぎろりと睨みつけた。まずい、俺の心の声に気付かれてしまったか!?

「基山くん……だっけ?」
内心びくびくする俺だったが、灰音は俺ではなく俺の後ろに座っていたヒロトを睨んでいたようだ。前回あれだけ雪宮にセクハラまがいのことをしていたヒロトを警戒しているんだろう。

「いーい!? これから和泉ちゃんにセクハラしたら、あたしからの鉄拳が飛ぶと思いなさい!!」
つかつかとヒロトに近付くと、灰音はびしりとヒロトの鼻面を指差した。きょとりと目を見開くヒロトは男の俺から見ても美形というやつで、中身を知らない女子は騙されるだろうななんて思う。


「……俺は構わないよ?」
ヒロトは規格外なんだと俺は再確認した。必殺技の強さ的な意味でも、性質的な意味でも、性癖的な意味でもな!
満面の笑みでにっこりと笑ってみせたヒロトは、小首を傾げて爆弾を投下した。
余裕なそぶりを見せるヒロトと怒りでわなわなと震える灰音を見て、雪宮は困ったような顔をしている。無関係ならば彼女は『仲良しですね』ってふんわり笑っているのだろうが、自分の名前が出ている以上どうすればいいのかわからないのだろう。

ちゃっかり雪宮の隣を占拠していた吹雪が、困っている彼女に『ヒロトくん本当に変態だから気をつけてね。なにかあったら僕が駆け付けるから』とか吹き込んでいる。前半は真実だが、後半は吹雪の下心満載の台詞だ。
駆けつけたその後お前はどうするつもりだ、と声を大にして問いたい。俺たちはまだ中学生だぞ! にゃんにゃんするなんて絶対許さないからな!!
…吹雪ならやりそうなのも事実。
その時は…俺と佐久間が全力で止める。よし、これで行こう。

…佐久間、目を逸らさないでくれよ。



「変態じみた台詞を爽やかに言い放たないでよ!!」
頭痛のし始めた頭をなんとか緩和しようと、こめかみを押さえるが効果はゼロだ。
吹雪のことは置いておき、ヒロトについては俺の心を灰音が代弁してくれた。本当にありがとう灰音。後で甘いものでも差し入れるよ……。


「変態じみた? 変態の間違いだろ?」
「つ、つつつ綱海さん! だめですよそんなこと言っちゃ……!」
灰音の声に返したのは綱海だった。隣の立向居が慌てた様子で綱海の口を塞ぐが時既に遅し。
しかも立向居、慌ててるってことはお前もヒロトのことを変態だって思ってたんだな…。幸いにもそれが聞こえたのは俺と立向居と他数名のようで、ヒロトには聞こえてなかったらしいのが救いだ。
ここで収拾のつかない状況に困ってか、雪宮が監督を見上げた。


「あの、監督さん……練習はいいのでしょうか?」
雪宮の声に振り返れば、彼女は首を傾げていた。練習が始めるとなればこの事態も収拾がつくはず。希望が見えた俺は監督を見た。


「……とっくに開始時間は過ぎている。」
が、その時の監督の顔の恐ろしさは…言葉では言い表せない。
ただ、久遠が監督に向かって静かに(その冷静かつ静かな久遠の声がとても怖く聞こえた)呟いたのは覚えている。



お父さん、顔怖いよ?
(大体ねぇアナタ顔からして変態なのが丸わかりなのよ!!)
(へえ……そうなんだ。すごいなぁ。)
(誉めてない!!)
(……早く練習しろ…!)
(す、すみません…本当にすみません…!)
(佐久間、思ったことを言ってもいいか。)
(奇遇だな風丸。俺も思ったことがあるんだ。)
((…本当に謝るべきはヒロトなんじゃないか……))
(おーい風丸、佐久間ー! 練習始めよーぜ!)
((ヒロトは放置なのか円堂!!))



かくして、俺たちと彼女たちの奇妙な生活が始まったのであった。


────


あとがき。
一応これにてネタSSは終了という形です。いやー秋野はちゃんと基山好きなんですよ!
『イケメンだけど実は変態』っていう設定の基山が大好きでしょうがないんですよ。二次創作とかの話ですが。
本編の基山はただのイケメンです。ただのいいイケメンなんです。

どうしても完璧なイケメンよりも面白いイケメンに走ってしまう私。
秋野が基山書くといっつも変態になったり、ちょっと変になったりして大変です←

とりあえず、補足しておくと。
みんながみんな二人のどちらかに惚れてるとかってわけじゃないです。きっと好きな子とかいると思うし。
「可愛いな〜」って目移りはしてるかもしれないけどね!←

基山と吹雪、立向居は清楚な子とか好きそうだし、和泉派だと思いました。てへぺろ☆
綱海にーやんは曇派だと思う。胸大きい方が好きそうだし←
風丸さんも曇で、あきおちゃんはどうでもいいとか思ってそう。佐久間は…鬼道さんのことしか頭にないと思う。恋愛出来なさそうです。

円堂さんはきっと「二人とも良い奴だよな! よし、みんなでサッカーやろうぜ!」だと思うのでもう何も言うことはない。


(追記)-- 2012/08/09 10:22


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