移る


相も変わらず私をストーカーしてくる東月。
今日も朝から追いかけ回され…違った、抱き付かれてお姫様抱っこで教室までつれていかれました。
お姫様抱っこって、私にとってはとてもとっても怖いものなんです。
昔従兄弟にやってもらった時落とされたという悪い記憶しかなくて、私は東月の首に抱き付くしかなかったんです。
ええ、そりゃあもう泣いてましたよ。
東月は、なまえは大胆だなあ、なんて言ってたけどうんな訳あるか。
今日は朝から一段とつかれた…。

「…つ、きこ…」
「なまえちゃん…!?」

私はいつもというか、毎日学校に行くのが早い。
前に時間を遅らせていけば東月はいないんじゃないかと思って実行した日には遅刻しかけた…。
だから、いつも月子より早く教室につく。
教室に入ってきた月子の名前を泣きながら呼んだ。

「どうしたの…?」
「とづきが、…泣かせる…」

私がそう言った瞬間月子ちゃんの目の色が変わった。
私は背筋が凍った。

「錫也、なまえちゃん泣かせるってどういうこと!?」
「別に、泣かせたわけじゃないよ」

泣かせたわけじゃないよって、私現在進行形で泣いてます。
マジ泣きして教室まできましたからね。

「じゃあなんで今なまえちゃんがないてるの!?」
「嬉し泣きじゃないのか?」
「んなわけあるかボケェ!!」



朝から馬鹿な東月に付き合わされとても疲れた。
だがしかし、あいつの作る料理は旨い…。
女としてこれは屈辱的なことでもあったけど、美味しいので気にしないことにした。

「これ旨い」
「…女の子だから胡座かいてご飯食べない…まあ、スカートの中見えて嬉しいけど」

ここでまたおかんの発動である。
最後の言葉は聞かなかったことにしよう。
というか、スカートの中身を見られたぐらいじゃなんとも思わない。
だって、スパッツはいてるから。

「正座でご飯はキツい」
「せめて足を開かないで座ろうか」

にっこりと笑いながら重箱を私から遠ざける東月に私は従うしかなかった。
ここで皆さん気が付いているでしょうか?
今日この場所、屋上庭園には私と東月しかいない。
理由?そんなの簡単だ。
月子は弓道のミーティング&保健係の仕事。
哉太は言わずもがなサボりで昼食にもこない。
きっと中庭か校舎裏で爆睡でもしているのだろう。
東月の美味しいご飯食べれないなんて残念だったな哉太、ざまあ。

「これおいしい」
「牛蒡のきんぴらか。なまえが好きだっていってたから作ったんだ」
「……」

一体その情報は何処から仕入れているのだろうか。
言っておくが私は高校に入ってからは誰にも牛蒡のきんぴらが好きだなんて言っていない。
言ったらババくさいって思われるから。
私は濃い味付けの洋食より、薄味の和食の方が好きなのだ。
東月は私の好きなものを栄養バランスよく弁当にいれてくるから本当にすごいと思う。

「なんで私の好きなもん知ってるの」
「ん?俺にはいい情報屋がついてるからな」

情報屋…?
情報屋と聞いて出てくるのはただ一人しかいない。
くひひ〜と、いかにも変態ですみたいな笑い方をする赤毛で三編みのあいつだ。

「白銀、先輩…?」
「うん、そうだよ。よくわかったな」

私は白銀桜士郎基、変態クソゴーグルを殴りたい気持ちで一杯になった。
あいつはプライバシーというものを知らないのか。
これはプライバシーの侵害だ!
法律で禁止されてるからね!!

「今日こそあの変態を殴る!!!」

そう言って立ち上がり、走りだそうとしたのだが、東月に手を捕まれて引っ張られたせいで前に進むことは叶わず、後ろに倒れた。

「ひっきゃああ!!」

東月に引っ張られたということは東月の胸の中へとダイビングするということだ。
この前と同じようなことにはなりたくなくて足と手を動かしたが重量に従って私の体は東月の胸の中へとダイビングした。

「いやあああああ!!!」

すぐに東月に抱きつかれ、私は悲鳴をあげた。
まあ、東月は私が悲鳴をあげたぐらいじゃ離さないけど。
腕がお腹に回ってギュッと東月に抱き寄せられる。
その行動が私にとっては恐怖で、背中がゾワゾワして全身に鳥肌がたつ。

「他の男のとこなんていかせない」
「ひっ…」

耳の近くに東月の顔があって、息が耳にかかり、腰の力が抜ける。

「なまえ…」

耳元で囁かれ、私は縮こまった。
体にうまく力が入らなくて動けない。
この状態じゃ私が東月の腕の中にいるのを拒否してないみたいじゃないか!

「お前は、…」
「てぇえいッ!!!」

力を振り絞って東月の顎に頭突きをかました。
痛っ…と言って顎を押さえ私から離れる東月。
石頭だから私は全然痛くない。
今のうちに逃げようとするが、再び手を捕まれて逃げられない

「近づかないでよおおおお!!!!変態が移るでしょおおおおお!!!」
「そうだな、白銀先輩に近ずくとな」
「お前だよ!!!」

女の子としてはどうかと思うが、東月の大事なところを蹴って、手の力が弱まったすきに私は逃げ出した。



くっつかないでください移ります変態が


Title by 確かにだった
20130203

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