一年に一度の

「なんでこうなった…」
「ご、ごめんね、梓くん…」

彼女である名前先輩と二人で過ごそうとしていた僕の誕生日。
彼女が午前は外せない用事があるからそれが終わるまで無理と言われていて、午後しか一緒に過ごせない。
それなのに、何故か今僕等は屋上庭園にいる。
しかも、陽が暮れて空の月や星たちが輝きだし、ちらほら雪が降る中だ。

「ぬぬ―名前を独り占めにするからだ!」
「翼、名前先輩は僕のだから」

僕がそういうと、横にいた名前先輩が赤くなって少し俯いた。
多分、“僕の”という言葉に反応したんだと思う。
彼女のそんな些細なこと全てを、僕は可愛いと思う。
これを世間でいうとベタ惚れというのかもしれない。

「何で屋上庭園に来なきゃいけないのさ」
「それはね、梓くんの誕生日をみんなで祝いたくて…」

と、顔を赤くした名前先輩が言ってきた。
そして、昼に一緒に過ごせなかった理由も言ってくれた。

「錫也くんと、梓くんのケーキとか、作ってて…みんなくるからたくさん作らなきゃいけないでしょ?だから、午前は無理かなぁって…」
「…そういうことだったんですね」

これでやっと全て納得した。
この頃翼がそわそわしたり、僕の部屋に変に入り浸っていたのはそのせいだったというわけだ。
彼女は申し訳なさそうに眉間に皺を寄せて、もう一度ごめんなさい、と言った。

「…いいですよ、別に。名前先輩とは何時でも一緒にいられますから」

僕はそう言って笑ったが、名前先輩は何故か悲しそうな顔をして、また俯いた。
僕には、彼女のその行動がわからなかった。




屋上庭園に何故か炬燵やらヒーターやらがあり、食べ物が置いてある所だけは暖かくなっていた。
みんなでそこに集まり、わいわいと食事を始めた。

「東月と名前の飯だああああああああああ」
「白鳥くん、逃げたりしないから落ち着いて」

これは、僕の誕生日会と、彼女は言った。
だけど、僕のためというより、他の人のためという方が正しいかもしれない。
一番わかりやすい例は白鳥先輩だ。
僕におめでとうとかの言葉は一言もなく、料理にがっついている。

「あ、梓くん…?」
「…何ですか、名前先輩」
「怒ってる?」

怒ってると言えば、僕は怒っているのかもしれない。
一年に一度の誕生日だし、好きな人と二人で過ごしたいと思う。
だけど、人に当たり散らす程の怒りではない。

「怒ってないですよ」
「梓くんの嘘つき。梓くんずっと笑ってないもん」
「だから、怒ってないです」

名前先輩は上目遣いで睨んでくる。
可愛いのだけれど、僕の話を全く聞こうとはしてくれないようだ。
先輩は暫く僕を見詰めていたが、諦めたようで俯いた。

「…明日、空いてる…?」

先輩が小さく呟いた言葉は、回りの喧騒に掻き消されず、僕の鼓膜を揺らした。
俯いた名前先輩を僕が見詰めていると、名前先輩が顔を上げて僕を見た。

「今日は、二人になれなかったから……明日は、駄目かなぁって…」

そう言って再び俯いて顔を真っ赤にさせた名前先輩を、僕は抱き締めた。

「あっ、梓、くん…!」
「明日、空いてますよ」
「…明日は、二人でゆっくり過ごしたいな…」

そう言ってさらに顔を赤くさせ、僕の胸へと顔を寄せる。
そね仕草が可愛くて、抱き締める力を強めた。

「あ゛―!木ノ瀬がイチャイチャしてる―!!!」
「いいじゃないですか、彼女なんですから」

そうい言うと、白鳥先輩が俺も名前とイチャイチャしたいと言い出す。
人の彼女だとわかっててそれを言っているから白鳥先輩のそういうところは好きではない。
だけど、名前先輩が俯きながらこういったのでよしとしよう。

「…梓君以外とイチャイチャなんてしないよ」



一年に一度の誕生日


梓君の誕生日からもう20日も過ぎております…orz
そして短い…スランプか…スランプなのか…!?
取りあえずおめでとうございました!w

20130112

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