君なんて、×××

前回更新いたしました、「初めまして、さようなら」の続きになります。



「おはよう、東月くん…?」
「…おはよう、名字さん」

相も変わらず、名字さんは俺と話す時に必ずクエスチョンマークをつけてくる。
今日は日直でいつもより早く来ているため、月子や哉太がいなくて話が盛り上がらない。
月子の隣の席ということは、必然的に俺の席とも近くなる。
後ろからの視線に堪えながら、日誌を書いた。
一〇分程たったころ、名字さんが席から立ち上がり、俺の前の席の椅子に後ろ向きで座った。
後ろ向きで座ったということは、俺と向き合っていると言うことだ。
俺にあんな表情や態度をしといて前にすわるのはどういった理由なのか。

「東月くん、字綺麗だね」
「そうかな…?ありがとう」
「東月くんはさ、…」

そこで、彼女の言葉は止まった。
俺は何なのかと思い、顔を上げた。
彼女は俺をじっと見ていた。

「…何か、ある…?」

彼女の瞳を見たら、俺の全てを見透かされているような気がして、背中がぞくりと粟立った。

「東月君、私のこと嫌いでしょ」
「…そんなこと…」
「ある。私の態度がおかしいのもあるだろうけどさ」

そう思うのなら、俺に話かけなければいいんじゃないのか。
しかも、態度の違いに気づいてるならなおここにいることがおかしい。

「私はね、東月くんのこと好きよ?」
「へえ。君は嫌われてるって気付いてるのに話しかけてくるのかい?」
「えぇ、だって私とそっくりだもの」

わけがわからない。
さっきから名前さんの言っていることは支離滅裂だ。
しかも、そっくりとはどういうことだ。

「東月くん、幼馴染みのこと好きじゃないものね。私もよ」
「っ…それは、どういうことかな…?」

何故ばれた、それだけが俺の心の中のを占めた。
折角ここまで築き上げてきたのをここで壊されてたまるものか。
名前さんを睨むと、ニコッと笑返された。
その行動は余計に俺をムカつかせた。

「楽しくないでしょ?この生活が。私もなの。だからね、私はこのつまらない人生を楽しめるようにしたいの」
「ふーん…」

残念だね、俺はこの生活が楽しめるようなものだなんて思えない。
どうせ、何をどうしたってつまらない。
ならば最初から、積み上げてしまえばいい。
自分の思うように進むために。

「だからね、同じ者同士仲良くしましょ?」
「嫌だね。俺はあんたと同じだとは思わない」

俺がそう言うと、名前さんはまたしても笑った。
俺はもう我慢ならず、書いていた日誌を閉じて立ち上がった。

「あら、どこ行くの?」
「君のいない場所」

そう言うと、名前さんは立ち上がって俺の腕を掴んだ。
振り払おうとしたが、案外力が強く振りほどけなかった。

「私は東月くんのこと好きよ」
「…そう…俺はね」



大嫌いだよ



君なんて、×××


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