最後の愛言葉

私の首を、錫也が絞めている。
私、死ぬんだ。
そう、直感した。
今までの思い出達が、走馬灯のように駆け巡った。








「えっ」
「えって酷いなあ。僕は本気だよ?」
「えええだって、東月くんが…」
「それで、答えは?はいかYesしか受け付けないから」

これは、錫也に告白された時だ。
錫也を好きになったのは入学式の時、一目惚れだった。
だけど、私には告白する勇気がなく、ただ見ているだけだった。
そんな時、錫也から告白してきたのだ。

付き合う以外の答えないじゃん!!って、ちょっと怒った覚えがある。
それもいい思い出。







「今日は、楽しかった?」
「うん!!その、す、錫也と長い時間一緒にいれて、嬉しかった!!」
「っ、また、可愛いこと言う…」
「えっかかかか可愛くなんてないよ!!」
「ううん、可愛い…。キスしてもいいか?」

二人で初めてデートしたときのこと。
ファーストキスもこのときだ。
幸せだった。
錫也も少し顔が赤かったりして、私も嬉しくなった。






「ごめんな、名前のこと考えなくて」
「ううん、いいよ。気付いてくれたから…」
「…可愛い…」
「だ、だからっ…んっ…」

錫也とケンカした時、錫也から謝ってきた。
私は自分が悪いとは思っていないけど。
あの時錫也と離れた時の辛さは忘れられない。



ああ、どれも私が錫也を好きだと言っているような思い出達ばかりだ。

こんなんじゃ、私が別れを告げたことが馬鹿みたいだ。
でも、縛りたくなかったんだ。
私のせいで大切なものを失う錫也を見たくなかったんだ。





「…名前っ…」

名前を呼ばれ、ふと現実に戻る。
もう、息がくるしくて、目の前が霞んできた。

「名前…名前、名前」
「…す、ず…や…」

私の名前をひたすらに呟く錫也を見て辛くなる。
だけどもう駄目みたいだ。

「名前、ごめん…愛してる…」

そう、に聞こえた。
今まで錫也の顔がちゃんと見れなくてどんな表情をしているのかわからなかったが、錫也の頬から滴が垂れてきた。
ああ、錫也が泣いてるんだ。
私のためなんかに。
錫也が顔を上げて、表情が見えた。
錫也は、涙を流しながら──笑っていた。



「    」



錫也にそう呟いたのが最後、意識は消えた。



最後愛言葉



20120628

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