終焉

「…錫也…?」

私が呟いた言葉は、真っ白な病室で反響して消えていった。
錫也は青白い顔でベッドに横たわっていた。
横の心電図の線はなにも動かず、数値は0だった。
私は間に合わなかったのか。
錫也の最後に。

「先程、お亡くなりになられました」
「…そう、ですか」

横で点滴を外していた医者らしき人が私にそう言ってきた。
ベッドに近付いて錫也の手を握ったが、手にはもう温もりがなく冷たかった。

「っ、錫也…!」

目を覚ましてよ。
まだ錫也に言いたかったこと言ってない。
私、錫也のことが―――




錫也の両親が病院へと来て医者と話をしていた。
私は部外者のようなものだったから病室から出て、話が終わるのを待っていた。

「名前ちゃん…」
「あ…」

錫也の両親はお話が終わったようで部屋から出てきた。
二人は寄り添いながら私の方に歩いてきた。
私もああなりたかった―――錫也と。

「…これ、錫也からあなたにって」
「私に、ですか…?」
「えぇ、先生が錫也から受け取ったみたいで」
「名前さんに、と錫也がはっきり言ったそうなんだ。だから君が受け取ってくれないと困る」
「っありがとう、ございます…」

錫也の両親から渡された小さな小箱。
今は開ける気になれず、鞄の中に大切にしまった。




錫也が亡くなってから一年がたった。
私は、錫也から貰ったあの小箱を開けれずにいる。
いつも持ち歩いてはいるのだが、開ける勇気がないのだ。

「…錫、也…」

今日は仕事もなく、することもなかったから錫也のお墓参りに来た。
お墓の前に立つと、一年前を思い出して涙だが出てきた。

「錫也っ…会いたい、よ…」

その時何処からか聞き慣れた声がした。

「すず、や…?」
『名前、笑ってよ』

バッと後ろを振り返るが誰もいない。
右も左も上も、何処にもいないのだ。

『俺はいつでも名前を見てるよ』
「錫也がいないと生きてけないよ…」
『名前は一人でも大丈夫だよ。…まだ、あの箱開けてないだろ?』

あの箱というのは、病院で渡された小箱のことだろうか。
鞄を漁り、小箱を探し出した。

『それ、開けてくれないか』
「っ…これ…」
『それは、俺の気持ちだから…だから…受け取ってほしい」
「…貰うよ、私も錫也と同じ気持ちだもの…」
『…ありがとう』

小箱の中に入っていたのは指輪だった。
小さな石がはめ込まれたシンプルな私が好きなデザイン。
上蓋の内側に書かれたI love youという文字に涙が溢れた。

『名前は幸せになって…俺のことは忘れていい…だけど、指輪だけは手放さないで』
「錫也じゃなきゃ…無理、だよ…」
『名前なら大丈夫、名前なら大切な人が見つかるよ。…名前の幸せが俺の幸せだから』

その時背後から誰かに抱きつかれるような感覚がした。
だけど、何もないし誰もいない。
これはきっと錫也なんだろう。

「錫也…」
『名前、ありがとう…大好きだよ』

風が私を包み込んだ。
唇に柔らかい感覚がしたが、それが風なのか何なのかはわからない。
だけど、それが錫也だったら私は…。

「錫也…私も、大好き…」




三年後、東月家とかかれたお墓の前に妊娠した女と男がいた。
男と女の左手の薬指には同じ指輪がはまっており、二人は結婚しているとみてとれた。
女の右手には、三年程前にこの場所で開けた小箱の中身が光輝いていた―――






梓upする言ったのに錫也になったorz
この小説不完全燃焼すぎる。
入れたいことあったのに忘れた。
あ、錫也は子供をかばって事故にあったという設定でした←忘れてた

20121012

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