殺意

私は翼が好きだ。
小さい頃出会ってから、ずっと一緒にいた。
翼は中々私に心を開いてくれず、中学に上がる頃やっと私に心を開いてくれた。
私は沢山時間がかかったのに、生徒会の人達はみんな数ヶ月で仲良くなった。
なんで、なんで、なんで…っ。
私の方が過ごした時間は多いのに、段々翼から離れていくような気がした。
だって、私といた時よりも、生徒会の時の方が楽しそうに見える。
それに、月子先輩を見る目が私を見る目とは違うのだ。
翼は、月子先輩が好きなのかな――




「ぬ、名前〜久し振りだな!」
「そうだね」

次の授業は視聴覚室に移動することになっていたから廊下を歩いていたら、翼が前方から歩いてきた。
翼が久し振り、と言ったのは当たり前だろう。
私が翼を避けてたから。
放課後、生徒会室に入り浸っていたのだが、翼が月子先輩のことを優しい目でみてるから、行きたくなかった。
仲良く話をしている二人をみたくない。
笑いあっている二人をみたくない。
一緒にいるとこをみたくない。
月子先輩と一緒にいてほしくないけど、これは私の我儘だし、翼と私はただの幼馴染みだからそんなこと言えなかった。

「なんで生徒会室にこないのだ?」
「課題があったから行かなかっただけだよ」
「じゃあ、また来るんだな!」
「…うん」

ぬはは〜、って笑う翼にいかないなんて言えなくて、ただ笑うしかなかった。
その時、背後から私の聞きたくない声が聞こえた。

「…翼くん?」
「ぬあ、書記だ〜!」

翼が、笑った。
私に笑い掛けた時より、優しく笑った。
胸がずきんずきん、と痛んで、私に黒い感情を沸き起こさせる。
でもね、痛みがなくなることなんてない。
この痛みを消す方法は、きっとこの世になんてないから。
だから、私はこの痛みを抱えて生きていくんだ。




「ぬぬ、名前が来たのだ―!」
「翼が来いって言ったでしょ」

笑う翼に、やっぱり私は笑うしかないの。
辛い顔なんてできない。
翼に辛い顔して欲しくないから。

「新しくできた発明品、勉きょ…」
「 つ ば さ く ん ? 」
「ぬがが―!」

翼がどこから出したかわからないマシーンを颯斗先輩が横から奪い去った。
どうせ爆発するだけなんだろうけど。

「そらそら!何するんだ!」
「…翼くん、まだ提出していない書類が沢山ありますよね…?」
「…うぬ、やってくるのだ」

いつにもまして切羽詰まったような顔の颯斗先輩の黒いオーラに、翼が引き下がったというか引き下げられたというか、颯斗先輩凄い。
あの翼を沈めるなんて。
私には到底できない。

翼は大人しく椅子に座って、書類を整理し始めた。
私はというと、やることがないのでソファーに座らせてもらっている。

「名前さん、すみませんね」
「私のことは気にしないでください。勝手に来ただけですから」

颯斗先輩は私に一度笑いかけてから机に向き直った。
暫くはぼーっとしていたのだが、段々眠くなってきてソファーで寝てしまった。




「…で、…だったのだ」
「…そうなんだ。面白そうだね」

翼の声が聞こえる。
楽しそうな声。
私といる時、こんな楽しそうに話さない。
なんで、私といる時と違うの。

「……、…」

ゆっくり目を開いて、回りを見た。
そこにはやっぱり翼と月子先輩がいて、二人は楽しげに話をしていた。
つきん、とまた胸が痛んだ。
なんで、私ばかりこんな思いしなきゃいけないの。
なんで翼の好きな人は私じゃないの。

「ぬぬぬ、名前が起きた―!」
「…翼、うるさい」
「名前ちゃん、よく寝てたね」

月子先輩はそういて微笑んだ。
私は月子先輩なんていなくなればいいって、月子先輩がいなければ翼は私を好きになってくれたかもしれないって、そんなこと考えてるのにこの人は綺麗に笑うんだ。
私はそうやって笑えない。
ああ、だからなのか。
翼が月子先輩を好きなのは。

「名前、こっちに来るのだ」
「はいはい、いきますよ」

ラボに入ってく翼に続いてラボに入った。
ラボの中はカーテンが閉めてあって、しかも電気まで消してあったから暗かった。
足元にあった物に躓いたりしてしまった。

「翼、電気は」
「いらない。今から見せたいものがあるのだ!」

見せたいものって何よ。
月子先輩に見せたいんじゃないの。
なんで、私になんか見せるんだろうが。

翼が座布団の上に座って、横の座布団の上をぽんぽん、と叩いた。
それは座れと言っているのだろうか。
取り敢えず横の座布団に座って大人しくしていた。
横でバチバチとか、バキッ、とか音がしたけど気にしないことにいておこう。

「お星様きらきらマシーンなのだ―!」
「…ようするに、プラネタリウムね」

翼の手元にある黒い箱を見るが、とてもプラネタリウムにはみえないのだが。
爆発しなければいいけど…。

「いっくぞぉ―!」
「……お―…」

暗い部屋に映し出された、沢山の星達。
私は星が好きでこの学園に来た訳じゃないから、星を見ても綺麗だなぐらいしか思わない。
翼がいるから、この学園にきただけ。

「な―綺麗だろ」
「そうだね…」

私の中に、小さな期待が沸き上がる。
これは、わたしのためにやってくれたかもしれないって。
でも、翼の次の言葉で期待は崩れ去った。

「書記も綺麗って言ってくれたんだぞ―」
「…月子、先輩…も…」

もう駄目だった。
今まで色々我慢したのに、耐えられない。
私じゃない。
翼は全部月子先輩のためにやってるんだ。

「ぬわぁっ」

横にいた翼を押し倒して馬乗りになり、首に手をもっていった。

「っ…、名前…?」

頭に血が上ってしまって、自分が止められない。
駄目だってわかってる。
心のどこかでこの関係を崩したくないって思ってる。

翼の首に回した手に力を込めた。

「……、…」
「…名前…」

少し辛そうな声で名前を呼ばれた。
辛いのは私だよ。
私意外を見ないでよ。

「…私…翼のこと…っ」
「…好き、だろ?」

翼に言いたかったことを先にいわれ、首に回していた手を離しておもわず後ずさった。
翼はケホッ、と何度か咳をしてから立ち上がった。

「…知ってたよ、名前が俺を好きなのは」
「…つば、さ…」

わからない。
私に一歩一歩近寄ってくる翼に恐怖を感じた。
顔は笑ってるのに、冷たい。

「…なあ、」
「っひ…」

翼は私の前に座って、さっき私がしたように私を押し倒した。
そして、大きい手を私の首に回して――力を込めた。

「…っ、つば…」
「書記に嫉妬した?ずっと生徒会室に来なかったのは見たくなかったからだろ?」

息が、段々辛くなる。
呼吸が浅くなって頭がクラクラする。
翼に言われたことが本当のことで、心臓が跳ねた。
首を絞められてるせいもあってか、心臓が動きを早めてく。

「…っは…ゲホッゲホッ」
「名前は、殺さないよ」

もう駄目だ、と思った時、翼が私の首から手を離した。
そして、私の手を恋人繋ぎで繋いで顔を近付けてきた。

「…俺も、名前が好きだぞ」
「っ、…私、…」

笑ってる。
翼が私に笑ってくれてる。
だけど、目が笑ってないのだ。
怖いこわいコワイ。
わからない。
なんで翼がこんな顔してるのか。

「名前も、俺のこと好きだよな?」
「…ゃ、……」

知らない。
こんな翼知らない。
翼は片方の手を解いて、私の頬を撫でた。
目は暗くて冷たいのに口元だけ笑っていて、恐怖で翼の言葉に頷いてた。

「名前、頷かなかったら本当に殺してたかも…」
「…っ…」

そう言った時の翼の顔が本気で、背筋が凍った。
だけど、直ぐにいつものような笑みに戻った。
目も笑っていて、いつもの翼だと見受けられた。
その顔に、酷く安心した私がいた。

「…キス、していい?」
「ん、…」

肯定のつもりで目を瞑ったら、すぐに唇に柔らかい感触。
温もりはすぐ離れていって、私を抱き締めた。
私も、翼の背にてを伸ばした。






文が纏まらないorz

20120920

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